今年初の出社だった本日、人生初めての抜歯であった。親知らずを抜く事になった経緯めいたものは以前書いた*1、その日だ。上部分の親知らずは簡単、レントゲンを見ても問題なく終わるでしょうと事前に歯医者から言われていたものの、何せ人生初の抜歯なのでちょっとドキドキしていた。と書いていて思い出したが、乳歯の時に一度だけ抜歯をした事があったはず、確か虫歯、痛くもかゆくもなかったので思い出もならなかったのでノーカウントでよかろう、親知らずとはいえ永久歯、実質初回だ。表面の麻酔をして、改めて注射で麻酔をして、いざ。耳が近いからメリメリという音が聞こえてくるものなのだな、と冷静に思っていたらもう終わった、あっさりしたものである。さすがに麻酔が切れてきてからは歯が、正確にいうと歯があったあたりがズキズキ痛んできたので鎮痛剤を飲んだ。抜けた歯はかわいいケースに入れてもらい持って帰ってきた。何せ親知らず、奥の方で自分では決して見る事ができない。しげしげ観察しながら、虫歯になっている部分を爪楊枝でつっつく、ぼろぼろと崩れて行く、やはりこのタイミングで抜くのが正解だったのだろう。これで物を噛んでいたのだ、お疲れ様のひと言くらい言おうかと考えたが、親知らずではほとんど噛んでいないはず、歯医者も「何の意味もない歯です」と切って捨てるように言っていた、なのでお疲れ様は言わないけれど、いらないものでも自分の体内にあったものだから、さようならくらいは言っておこうと思った。
近所のファミレスに行って、昼飯を喰ってからはドリンクバーをお供に読書の時間。今年は故あって意識して詩歌に手を出していってみる予定、あくまで予定。三時間くらい滞在してから、散歩がてら遠回りでスーパーに行ってから帰宅。夜はかんずり鍋、うまいけどこれならチゲでいいような気もする。〆はなしで、余っていた蒲鉾やチーズ、生ハムを摘む。読書の続きのつもりが、仕事の事前調べ物、勤勉な私。年末年始休みも終わり、まぁやりたい事ができてのんびりもしたのでよい休みであった。喰っちゃ寝した影響が健康診断にどう出るかだけが気がかりだが。休みの間の日記には写真を載せる事にして、何となくモノクロにしてみたのだが、なかなかよかった。色がある時にこそモノクロにするとおもしろい、またやろう。
初夢は見たが内容は覚えていない。駅伝見ながら鶏皮甘辛雑煮を喰らい、少しばかり仕事をする。オンラインでちょこちょこっとした作業だが、オンラインでできてしまうのだから便利で困る。終わらせてから外出。さすがにまだ三ヶ日、開いている店は少なめでぶらぶらと散歩。途中、駅ビルのタリーズで茶。本屋などを覗いていたら、ちょうど夕飯時になるも前述した通りやっている店は少なく、いろいろ彷徨った結果、ココイチに行く、まさかの二日連続カレー、許してくれ。
自宅でカフェオレと共にNetflixで『ドント・ルック・アップ』を見る。秀逸な風刺コメディでおもしろい。コロナ禍への政治の動き、科学者の振る舞い、一般人の理解と無理解と行動を思うと、笑えるけど笑えない。とはいえ、思いついてもここまでうまくはまとめられないだろう、アダム・マッケイ恐るべし。「ルック・アップ」でなく、「ドント」をつけるあたりの意地悪さがいい。俳優はみな好演熱演。レオナルド・ディカプリオはもっさりしているけど整えたらやっぱりいい男だよねーというのをうまく使っている。メリル・ストリープは名演技、さすが。そして何より、ジェニファー・ローレンス最強伝説は続く、すばらしい。まぁしかし、あくまでコメディ、ツッコミどころはあり、他国の動きがあまりにもないなど。
政治や科学、また資本主義が表テーマになっていて現代的だけど、同時に「信仰（宗教）とは」が裏テーマとしてさりげなくあったように思う。つまり特定の宗派（教え）ではなく、「日常と究極的な瞬間に何かに祈りを捧げる」事の本質。また、本作は風刺コメディだが、同じテーマのベン・H・ウィンタースの『地上最後の刑事』シリーズ（ハヤカワ・ポケット・ミステリ）を想起させ、私がよく引用する二作目『カウントダウン・シティ』のこのやりとりをまた思い出した。
「小惑星のせいで、多くの人間がしたように、おれもつらい決断をせざるをえなかったと言ってくれ。マーサなら意味をわかってくれるだろう」
「ちがう」私は首を振る。
「ちがう？」
「お言葉ですが、小惑星のせいであなたは奥さんのもとを去ったのではない。小惑星は、だれにもなにもさせていない。あんなの、宇宙を飛んでいるただの大きな岩のかたまりですよ。だれがなにしようと、決断はその人のものです」
二〇二一年、暮れております。
振り返れば上半期はある事から怒りを覚え、そこから何故か食欲が激減してみるみる痩せていくというちょっとどうかと思う痩せ方をしてしまい、さすがにリバウンドするだろうと下半期に入るや喘息が出てさらなる不調、それがようやく収まってきたところで猫二匹が入院そして通院生活になり、さらに年が明けたらすぐに親知らずを抜くという、健康第一としか言いようのない一年であったように思います。友人から厄年だと言われましたが、考え方を変えれば痩せたのは悪い事ではない、喘息も抑えられている、猫たちも落ち着いており年齢も年齢なので病気に付き合っていくしかない、だからこの一年でメンテナンスを行なったのだという考えもある。抜歯直後には健康診断もあり、そこから仕切り直しをする事にします。
一方、メンタルはというと身体の不調に引っ張られたのもあってか、落ち込む事は少なかったけれども、動くこともない停滞気味のままで、今年は特にインプットもアウトプットも控えめでした。一年を一昨年は「停滞」、昨年は「空白」と表現しましたが、今年は「空っぽ」でしょうか。来年はインプットもアウトプットも少し意識してやっていこうかと考えています。自分に刺激を、ほどほどに。
ずっと疲れている、それでも続いていく、歩くしかない、どこへいくのかどこまでいくのかといつも思いながら、どこまでもどこへでも、先へ、みらいへ、おっさんになってもまだそう信じて、私の過去が私のメロディとなって、歌の代わりに歩いて、考えて、書いて、それを来年も、ずっと続けていこうと思います。
よいお年を。
