会社に着いたらフロアに人が少なく、会議室を覗いたらテレビの前にみな集まっていた。私はそこではなく自分の部署にテレビがあるのでそれをつけて見ていた、私しかいなかったが途中で後輩が来た。スポーツにおいてのドラマは作るものではなく、振り返ったらできていたものだと思うので、ドラマありきのような采配はいささか鼻白むところがあるにせよ、結果から見ればドラマどころか伝説のような展開で熱く盛り上がってしまったのだからチョロいものである。スポーツの国際大会が盛り上がるたびに、ナショナリズムの高揚であったり、「これが戦争だったらもっとすごい事になるのだろう」といった声が聞こえてきて、それは正鵠を得ている面があるのは確かだけれど、安直な言葉ではあるが感動はもちろん夢や希望といったものをそこに見出す人もいるはずなので、ナショナリズムのみで語るのもおかしかろう。などと書くが、試合を見ておもしろさに興奮したりある程度の感動をしたりはするものの、スポーツから夢や希望を抱いだり、ましてやナショナリズムを高める事は私はほぼなく(日本を応援する事自体がナショナリズムなのだと言われればそうかもしれないが、それは元からうっすらあるものではないか)、だから他人事のように浮ついた言葉を使うしかないのだけれど。WBC、日本優勝おめでとう。
三月二一日、野球
そういえばWBCの準決勝戦だっけと思い出してテレビをつけたら三点ビハインド。なかなか攻略しかねて、二度の満塁のチャンスをふいにしていたのでこれは無理かもなぁと思っていたら、ホームランで追いつき、しかしすぐさま点を入れられ、さてはてどうなる九回の裏で大谷の吠える二塁打、吉田の四球、そして村上の逆転勝ち越し打というドラマチックな展開に歓声を上げる。しかし明朝決勝戦らしく、午前休をとる人が多そうだ、私は普通に行って会社で見ようかな。昼飯を食ったら喫茶店で読書。今日一冊読み終えそうだからというわけではないが古本屋で三冊購入、永遠に積んでいる本に追いつかない。家で読書再開、エレカシのライブDVD鑑賞。夕飯後に『新選組!』を二話。血が流れ、内外に不穏の種がまかれる。
マスクいつ外す
マスクをつけるつけないが個人の判断に委ねられるようになって一週間ほど経つが、通勤電車内では九割以上の人がまだしているように見える。私はというと、早い段階から人が多い場所ではつけて人が少ない場所ではマスクを外すようにしていて、いまもそれと同じような状況が続いているが外している時間が延びたとは思う。誰もいない帰り道などでマスクをつけている人は何を気にしているのか不思議だった、外すのが面倒なだけだろうか。これから暖かくなるのでおそらく外す人は増えていくだろう、そこに便乗して私も外そうかな。マスクは煩わしく嫌だったのでなくなるのは嬉しいけれど、通常生活でも三密は避けたいし、飲み会には行きたくないし、夜の人手も少なく街は暗い方がよかった、大変だった人多数なのは重々承知しているが個人的には実は意外と快適だったここ数年間であった。
三月一九日、エレカシ35
そっちの方で夜に予定があるからと昼飯を喰う事になっていた姉一家と待ち合わせ、インドカレー、うまし。ららぽーと豊洲の芝生でドーナッツとコーヒーを楽しみながら談笑。数ヶ月ぶりにあった甥っ子がまた大きくなっていた、成長著しい、いつか相手してくれなくなる時が来るのだろうな。姉宅で茶をご馳走になりながら時間を潰させてもらい、十六時頃に解散。ゆりかもめで出た隣駅の新豊洲駅から歩いて数分、はじめまして有明アリーナ、お久しぶりですエレファントカシマシ、しばらくエレカシも宮本浩次ソロも縁がなくて実に六年ぶりのライブはエレファントカシマシ35周年ライブとなった。自分の体力が不安だったのでチケットをとらなかったのだが三次プレオーダーくらいのタイミングで薬も飲んでいるし行けるかなと申し込んだら当選。三階席後方だがむしろ座って見られるのでこの方がよかった。
せっかく無線マイクにしたのにギターが有線で、それを持って右往左往したり花道を行こうとしたりするので結局しっちゃかめっちゃかになって処理をするローディーに舞台を出たり入ったりをさせる宮本浩次、本日も絶好調、ソロの経験から歌唱力増し増しになっていた感あり。第一部は初期〜中期のバンドサウンドの曲中心、第二部は中期〜後期の歌中心の楽曲(ラストだけ何故かちゃぶ台をひっくり返すようなカオスなあの曲にしていて笑うしかない)、そして第三部が最近のキラー曲つるべ撃ちからの新曲、代表曲で〆るベストアルバム的セットリストでたいへん満足。もちろん他に聞きたい曲は山とあれど、そもそもの持ち曲の数が多いので(アルバム22枚、シングル50曲以上あるのだから)そのへんは仕方なし、またの機会のお楽しみに。白眉は久々に聞いたアコースティックアレンジの“風に吹かれて”、泣ける。たっぷりやってからのアンコールで改めて「エレファントカシマシ、幸せなバンドです。ステキな曲です、みんなに捧げます」と言って始まったのが、演出効果が真っ赤なライトだけの突き放すような“待つ男”で最高です、これぞ、これこそエレカシ。35年おめでとうございます、今後もよろしくです。
今度は豊洲までぶらぶらと歩いていき、なか卯で飯をさくっと喰ってから帰宅。ライブが十七時スタートで終わったのが二十時少し前と早めだったのは有難かった。心地よい疲労と共に日曜が終わる。一日行けばまた休みだ。
三月一八日、シン・仮面ライダー
雨模様の中、立川へ向かう。鶏肉料理の店で昼飯を喰い、オリオン書房で『国書刊行会50年の歩み』をもらう、こんなに濃くておもしろい冊子がただでいいのか。併設している喫茶店で時間を潰してから、シネマシティⅡへ。期待半分不安半分、庵野秀明監督最新作『シン・仮面ライダー』である。具体的なネタバレは書いていませんが、情報を入れたくない人は以下読まないでください、といちいち断るのもなんですが。タイトルを書いているんだからそれくらい自衛してくれ。
鑑賞直後は「庵野やった、やったな、信じてたよ」とガッツポーズをするも、しばらく経つと「うん、まぁ、でもいつもの庵野で、頑張っていたけど新しいものはほぼないかもな」となり、思ったより悪くないけど言うほどよくもないという微妙な評価で落ち着きそうで、それはそれであまりよろしくはない気がする。庵野秀明の現時点の集大成にして限界点。庵野が次にやるべき事は休む事ではなく(『シン・ウルトラマン』の時に「休養する」とか言っていたはず)、すぐに新作にとりかかる事だと思う、ノスタルジーに終止符を打って次のステージに行け。
心配していた脚本は、ヒーローとは資質ではなく意志である事や性愛とは違う関係など思ったより頑張っていたけれど、やはり詰め込みすぎで拙速なためドラマが生まれない、かつセリフで説明しすぎなのに声が聞き取りにくいのが致命的。30〜40分で6〜8話くらいの連作にすべきだったのではないか。
ダーティーな雰囲気とはいえ娯楽大作なのだからアクションが肝心だが、これは率直に言って酷すぎる。庵野の身体性のなさが露呈していて何とかならんかったのか。我々は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』を通過しているし、日本にだって岡田准一の存在があるのだから、どうしたってアクションもそれなりのクオリティを求めてしまう。冒頭のバイクチェイスシーンからして不安だったがそれは最後までそのままだった、残念。スーツアクターを使わず、アクションらしいアクションを求めていなかったそうで、俳優陣は熱演はしていたと思うが撮影と演出がだめ、その手法は的外れとしか言いようがない。ショットはさすがの強度だけどそれが繋がっておらず、なおかつ強いぶんカメラワークがガチャガチャに見える。アングルやシチュエーションなど庵野の色といえば聞こえがいいが手ぐせから脱していない。そしておなじみのキャスティングはここまで来るとノイズ。と、後半は文句ばかり書いてしまったけれど、なんか私は好きだから困る。何なら二回目に行ってもいいくらい(行かないと思うが)。
地元に戻り、パスタ屋で夜限定のラザニアを喰い帰宅。今日は『新選組!』はやめて、パンフレットなどを読み、映画の余韻に浸っているのだから、やはりいい映画鑑賞だったのだろう、たくさん文句はあるけれど。
三月一六日、特典、温泉、野球
修羅場明けのわりには早めに起きられたので午前中から活動、といってもテレビで何かを見るだけだが。まずは『シン・エヴァ』円盤の特典映像、買ったのはカミさん。-46hはマリが『トップガン』のマーヴェリック大佐に見えた事以外はちと中途半端。特典だしこんなもんかもしれんが倍くらい時間かけてほしい。モーションコミックにした-120minの方がよかった。このまま『Q』を見たくなった。でもこの二つを特典映像でつなげたアスカの変化や迷いが少しクリアになるし、マリとのバディ感が増してそのあたりはよかった。最後のマリの「花嫁」は追加要素だと思うけど、ふーん、そこでそんな歌を差し込むんですね、ふーん、なるほど、と勝手に意味を読み込んだり。エヴァオタのカミさんは、「成仏した者としては、気持ちが戻ってこない……」と寂しそうでした。そのままエレファントカシマシの新譜についてきた(むしろこちらが本体な気もする)ライブ映像を途中まで。
本当は今日は近所の散歩程度のつもりだったが明日が曇天からの雨だそうなので、晴天の本日に少し足を伸ばして日帰り温泉へ行く。途中、昼飯でそば。温泉はそこそこ混んでいたが不快になるほどでなく、いつもより露天風呂が熱めでよい。風呂から出たら上司から着電あり、折り返したらひと作業のお願い(まぁ命令だが)でそのためには家に帰らねばならず、どこか居酒屋で飯のつもりだったのになぁと思ったが、歩き出したら温泉の気だるさが重かったので夕飯は買って帰る事にする。家でその作業を終えて、エレカシの続きを再生しながら買ってきた寿司をつまんでいたら、WBCの日本対イタリア戦だと思い出したのでチャンネルを回して観戦。夜はシャワーのみ。予定がつまっているようでのんびりできたよき休日。