不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近の四冊

 横木安良夫ロバート・キャパ最期の日』(東京書籍)。興味本位から始まり、日本にいたキャパの姿から最期の日、そしてラスト・ショットを追う中で、己も見つめ直す構成がおもしろい。わりと筆致はあっさりしているが資料の読み込みと取材は入念で、キャパが当時は言うほど評価されておらず、赤貧だった事などは知らなかったので興味深かった。やっぱり後から知ると、やたら評価が高く見えてしまうものだなぁ。装丁が好みでよいです。そういや、沢木耕太郎のキャパ本は発売当時は話題になったりNHKの特番になったりしたが、その後どれくらい売れて、どう読まれたんだろう。本屋で立ち読みはしたが、やはりあの沢木調が肌に合わず置いてしまった。そのうち図書館で借りるかな。というか、『ちょっとピンぼけ』もちゃんと読んでいなかったや。読んでみよ。

ロバート・キャパ最期の日

ロバート・キャパ最期の日

 川本三郎『あのエッセイ この随筆』(実業之日本社。ゆっくりとした時間を、エッセイや随筆を引用しつつ、ゆっくり書いている随筆。最期のお楽しみとして永井荷風断腸亭日乗』は読んでいないのだが、こういうのを読むたびに、読みたくてうずうずする。それにしても『孤独のグルメ』が出てくるとは思わなかった。
あのエッセイこの随筆

あのエッセイこの随筆

 徳岡孝夫『五衰の人 三島由紀夫私記』(文藝春秋。何故いまこれを手にしたのかは、さっぱり思い出せないが、読んでよかった一冊。切腹までの最後の三年半、三島由紀夫と対峙した週刊誌記者の私記。三島の思想的な部分を軸にしているが、文学もきちんと押さえてあるのが好ましい。三島を扱ったものは暑苦しい、または押しつけがましいものが多い中で、本書はさらりとしていて、どこか静謐さがある。むしろ、時折り冷淡ですらあり、毒もたっぷり。文章に広がり、奥行きがあって、巧い。そして、三島由紀夫はきちんと読んでみないとなぁと再確認した。
五衰の人―三島由紀夫私記

五衰の人―三島由紀夫私記

 國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社。話題になっていたので、てっきり哲学(倫理学)を使った最近の社会時評かと思っていたら、もっと根源的な問いかけをしている本だった。暇と退屈がこれほど人間にとって根深い質のものだったとはね。なかなかに興味深かったが、俺は一読では咀嚼しきれなかった。そのうち改めてもう一回読むかな。

 思考は強制されるものだと述べたジル・ドゥルーズは、映画や絵画が好きだった。彼の著作には映画論や美術論がある。そのドゥルーズは、「なぜあなたは毎週末、美術館に行ったり、映画館に行ったりするのか? その努力はいったいどこから来ているのか?」という質問に答えてこう言ったことがある。「私は待ち構えているのだ」
 ドゥルーズは自分がとりさらわれる瞬間を待ち構えている。〈動物になること〉が発生する瞬間を待っている。そして彼はどこに行けばそれが起こりやすいのかを知っていた。彼の場合は美術館や映画館だった

暇と退屈の倫理学

暇と退屈の倫理学