不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

中平卓馬の写真集は一冊だけ持っている

 柳本尚規「プロヴォーク: 中平卓馬をめぐる50年目の日記 』(読書人)を読んだ。タイトル通り、写真同人誌『プロヴォーグ』制作の裏側を、特に中平卓馬の側から関わっていた人物の回顧録で、「日記」としながら×月×日形式ではないのはなんだが、多木浩二岡田隆彦高梨豊、そして森山大道らの躍動や、1968年というある意味で特別な一年(と思っている人は多いはず)を描いており、おもしろかった。できれば言及する写真の何枚か掲載してほしかった、せめて『プロヴォーグ』の表紙や中身くらいは。まぁ版権が高いから仕方ないのだろうけど。あくまで『プロヴォーグ』時代だけであって、そのあとは最後に少しだけ。そういえば中平卓馬の写真展「中平卓馬 火―氾濫 - 東京国立近代美術館」が開催されるので、というかそれに合わせて本を出したのだろう、せっかくなので行こう。

 それにしても五十年前の事をよくぞこんな克明に覚えているものだなと思う、それとも本当に日記をつけていたのだろうか。別に著者を疑っているわけではないけれど(本人も自分の記憶だとあとがきで念押ししている)、会話であれ行動であれ、ここまで覚えていられるものか。仮に私がたとえば最初の会社で関わったプロジェクトの事を書いてもこんな細かくは書けない、印象的ないくつかの出来事は覚えているけれど。まぁそれでも本人の記憶ならば受け入れられるんだけど、たまにノンフィクション、特に海外のもので、その場に居合わせたわけでもないのにあたかも見てきたかのように他人の場面を描写しているものがあるが、あれはいいのか、フィクションに近いのではないかといつも疑問に思ってしまう。