不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

ジリジリ

8月の天候 異常な高温 年間の猛暑日最多など記録的暑さ 北陸や東北では極端な少雨(気象予報士 石榑 亜紀子 2023年08月31日) - 日本気象協会 tenki.jp

 一昨日書いたように、八月が妙に長く思えたのは暑かったからだろう、だが毎年夏は暑いもので「今年の夏は暑いねぇ」とは挨拶みたいなものだと思っていたら、東京都心は《この8月は1日から31日まで一度も30℃を下回っておらず、8月に31日まで全日、最高気温が30℃以上になるのは、統計開始以来、初めてのこと》だそうなので、本当に「今年の夏は暑」かった。《8月はジリジリ》という歌い出しの曲があるが、こうまで暑いともはやジリジリという伝わりきらない気がしてくる。他に何か表現ないかなと探してみたら谷崎潤一郎は「油照り」と書いていた。

たゞ京都の初夏の頃にしば/\ある、陰気な雨雲が蔽ひかぶさつてゐる間から日が油照りに照りつけて、じつとしてゐても顔や体がぬら/\粘つて来るやうな、そよとの風もない、蒸し暑い、重苦しい日であつたに違ひない。
谷崎潤一郎 青春物語

 さすが、暑さがこちらまで伝わってくるようだ、京都は特にそうであろう。これを読んでふと思い出したのは、内田百閒の芥川龍之介の自殺についての一節。

芥川君が自殺した夏は大変な暑さで、それが何日も続き、息が出来ない様であった。余り暑いので死んでしまったのだと考へ、又それでいいのだと思った。原因や理由がいろいろあっても、それはそれで、矢っ張り非常な暑さであったから、芥川は死んでしまった。(「亀鳴くや」)

 芥川が自殺した1927年7月の暑さはどの程度だったのかと調べてみたら*1、最高35.6度、平均26.0度。そして今年2023年の7月は最高33.9度、平均28.7度、8月でも最高34.3度、平均29.2度*2。最低気温を見ると1927年は20度を下回っている日もある、昔はコンクリートアスファルトがなかったので日が沈んだら気温が下がりやすかったという事だろうか。それならまだ過ごしやすい。確かに最高気温は1927年の方が暑く、芥川はあまりに暑くて死んでしまったのかもしれないけれど、ずっと暑くて「油照り」をし続ける現在の夏に芥川が生きていたら、死を選ぶだろうか、死ぬのを選ぶのも面倒になってしまうような暑さだった気もする。


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