何度か書いているように最近ジャンル問わず音楽を聞いていて、そこには当然クラシックも含まれており、誰がいいかと著名ピアニストを調べた際に名前も知ってその後何枚か聞いてもいた(ほとんどモーツァルトだった)フリードリヒ・グルダの自伝『俺の人生まるごとスキャンダル グルダは語る』(田辺秀樹訳、ちくま学芸文庫)が出たので読んだ。何故このタイミングで復刊したのか、そして何故ちくま文庫ではなくちくま学芸文庫なのか(そのせいか薄いのにやや高い)、謎が残るが復刊自体は有難い。人となりはもちろんマルタ・アルゲリッチの師匠である事も知らなかった。翻訳の際に一人称をどうするかというのは大きな課題ではあるが、グルダは「俺」で、べらんめえ調とまではいかないがかなりフランクでかつ乱暴な口調で毒舌を吐きまくる、その姿はいわゆる「クラシックピアニスト」のイメージとは違っていておもしろい。それもそのはずで、グルダはクラシックに留まらず、ジャズにも手を広げているからで、その自由さこそが彼の本質なのだろう。ただ、現代音楽に批判的なのにチック・コリアとの共演盤を聞いたらジャズよりも現代音楽に聞こえて、私にはよくわからなかった。クラシックはともかくジャズではトップレベルにはなれなかったようだ、と現代音楽とフリーミュージックの違いもわからない私程度が言ったら怒られそうなので、もっと聞いてみる事にしよう。