不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

二〇二〇年四月七日の日記

 カフェオレを飲んでから出かけて、いつもよりも遅めに着いた会社は在宅勤務が増えたのもあって人はまばらで、部内にも誰もいない。フレックスみたいなもので朝番遅番が何となく決まっているのだが、それも緩んでいる、このまま誰も来なければ俺も来ないのにと毎朝思う。いまのところ状況がダイレクトには響いていない職種なのでこれまで通りに仕事をしているが、方々から「在宅になりました」「あれは延期です」「これは中止になりました」という連絡が来る。「御社は?」と聞かれて「うちの部署は全員出てます」と答えると「あ……そうですか」という反応が返ってくる、まぁそうですよね。何考えているのだろう、上司は。

 昼飯を喰うため外に出てとりあえず本屋へ。半年ばかり文芸誌を毎月一冊は買って読んでいる、二冊買う事もあるが読みきれない、一冊が限度と思っているのに今月は『文學界』と『群像』を買う。臨時休業になっている店もちらほら見える中、カレー屋に入ってカツカレー。会社周辺を散歩してから帰って仕事再開。一件の会合を電話でやる事になったのだが長電話で疲れる。

 ぼちぼち帰ろうかと思っていたら緊急事態宣言が発令されたニュースが流れてきた。緊急事態である事を会社で知って、普通に電車で帰り、明日も会社に行くのだろうと思うと、滑稽ですらあるなと失笑。この時間帯にしては空いている電車に乗り、帰ったらちょうど首相の会見が始まっていたのでメシを喰いながら見る。

 食後、カフェラテを飲みながら買ってきた文芸誌をつらつらと読む。風呂に入りながら、いつもは休日に日記を書いているけれど、この平日も時折書いておこうと思い立つ。俺が信頼している人たち──この信頼は、いい事を言ってくれるとか正しい事を書いてくれるとか、自分の考えを代弁してくれるとか、そういう事ではなく、書き記す書き残すという思いを抱えた人──が日記を書いているから、俺も書こう。特定の誰かを思い浮かべ、また誰でもないあなたを考え、俺の日記を読んでくれるだろうか、俺の日記は読むに足るものだろうか、俺は何を書き残そうとしているのだろうと書く事への信頼と不安を抱えながら、交わすのではなく綴る事で。