日記を書く時のタイトル「休日派」はこれのオマージュだと何度か書いてきた、山田風太郎の名作日記「戦中派」シリーズが漫画化されると聞いた時は、期待半分と何をどうやって描くのだろうと心配半分で掲載雑誌は読んでいなかったが、このたび単行本化されて手に取った、電子書籍で買った場合も「手に取った」のか。
一読、なかなかよく描かれている、おもしろい。読み終えた後で日記を少しだけ読み返したが、たしかに日記の漫画化だ。主観と客観(のように見える主観)のないまぜ、距離をとって冷静に社会や事象を見ており、であるが故に「俺は大丈夫なのか、正気なのか」という自問自答が見え隠れしている。
この時期に読めてよかったと思う。己の身に置き換える、書き残す事、書き記す事。いま、日常に比べると死が近い世界にいる、それはむろん戦争中に比べれば遠い遠いものであって近いと表現する事さえおごがましいのだけれど、距離でいえばいつもよりは近い。その中で何を書くか。くだらない、シリアス、みっともない、なんともない、公開を前提としているから格好つける、気分に浸る、それでも書くしかない気がする、何者でもないけれどこの時の風太郎青年も何者でもなかった。
- 作者:勝田 文
- 発売日: 2020/03/23
- メディア: コミック