不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ本

 ノーマン・マルコム 『ウィトゲンシュタイン―天才哲学者の思い出』(平凡社ライブラリー 、板坂元訳)。著作を読んでみたいけど評伝でお茶を濁すの巻。見た目も生活も交流録も生き方も、これぞ「かっこいい哲学者」というイメージのままなウィトゲンシュタイン。考え抜いて苦悩してきた哲学者の最後の言葉が「僕の人生はすばらしかったと、みんなに言って下さい」で、著者は「ヴィトゲンシュタインの人生は、ひどく不幸なものだったと私は考えたくなる。…私には、彼の最後の言葉は不可解である」と書いているのが、また興味深い。本書に出てくる哲学話は結構おもしろかったので、彼自身の著書にも挑戦したい。そのうち。たぶん。
 変人エピソードでおもしろかったのは、アメリカで自室の金網を外そうとしたが「虫がすごい」と言われ、他の家にも金網があったのを確認したら、相手の弁を認めるのではなく「アメリカ人は金網が必要だという点について、こぞって浅はかな偏見にとらわれている」という結論に達したこと。言いがかりやんけ。

ウィトゲンシュタイン (平凡社ライブラリー)

ウィトゲンシュタイン (平凡社ライブラリー)

 鹿島茂『新版 吉本隆明 1968』(平凡社ライブラリー。元本は新書で、平凡社ライブラリー入りしたのね。「吉本隆明のすごさは、1968年に凝縮されているんだッ!」という鹿島茂入魂の吉本隆明論。わかりにくい・読みにくい吉本隆明を、さすが鹿島茂、かなりわかりやすくひも解いてくれている。まぁそれでも、正直わかったようなわからんような読後感だが。しかしあれよね、鹿島茂は違うんだけど、いま「吉本主義者」(吉本ファン)を公言している知識人(というかなんちゅうか)って、吉本隆明とは全然考えや姿勢が相いれない気がするな……。