不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

耳の謎

 バーナデット・マーフィー『ゴッホの耳ー天才画家 最大の謎ー』(早川書房、山田美明訳)。「錯乱したゴッホが耳の一部を切って娼婦に手渡した」事件の真相とは。専門家でも作家でもない、元美術教師が徹底的に調べ上げて真実に極めて近い事実にたどり着き、それを探る事で見えるゴッホの姿、というノンフィクション。これが最大の謎なのかは俺は知らないけれど、本書はメチャクチャおもしろかった。
 耳はどのくらい切ったのか、耳を渡した「ラシェル」は何者なのか……などなど、ゴッホほどの研究されつくされた画家であっても、丹念に、丁寧に、そして「当たり前だと言われる事を疑い、検証する」事で、いまだ新事実が発掘されるのだ。そうして「耳切り事件」の真実を探る事で、これまでのゴッホ像だけでなく、ゴッホを「追放」したアルルの市民たちや、「見捨てた」ゴーギャンなど、これまで語られてきたイメージは間違っていた事を明かしていく。イメージの固定化と真実について書かれており、目が覚める。真実が何かなんて、本当にわからんよ。ちょうど(というか合わせたんだろうけど)10月下旬から東京都美術館ゴッホ展やるので見に行こう。
 余談:ゴーギャンとのやり取りで、小野ほりでぃのこの漫画を思い出した。