不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

あっちこっち

 方向音痴には「ちょっとだけ方向音痴」という人はいなくて、ほぼ全員が「極度に方向音痴」である。そんな事はないという意見もあろうが、少なくとも俺の観測範囲ではそうなのだ。その中でも一番方向音痴なのは、我がカミさんである。
 たとえば何度も一緒に歩いている道で、不意に「あんなところに店があるよ」と言い出す。だがそこは初めてこの道を歩いた時からあるし、何なら「あそこに店があるね」という会話もした事もあるのに、全く覚えておらず、初めて見つけたかのように言う。まぁ覚えていないのは記憶力の問題かもしれないが、しかし「以前からそうだった」事を、何度も歩いた後にようやく気づいたりする。
 また、これはカミさんに限らず方向音痴の人は口を揃えて、「地下鉄から出ると、もうどっちに行けばいいかわからなくなる」と言う。駅にある地図を見れば、外に出た時にどっちを向いているかはわかるはずで、左右だってわかるだろう。いや、自分の感覚でわからないくらいならまだいい。「出て右方向に歩け」と言っているのに、「右と言っていたが、出入り口から出て右というのは、この右でいいのか」という、もはや哲学的な問いかけを始めて、挙句、絶対に逆方向へ歩こうとする。
 空間把握能力がないのかなと常々考えていたのだが、どうやらそうらしいと再確認したのは今日の事だ。昼頃にカミさんから、「猫がいたよ」とビルの近くを悠々と歩いている写真付きメールが送られてきた。「どこにいた?」と返信したら、その答えがこれである。「某ビルのこっちから見てあっちがわ」。
 どっちのどこだよッ! いや、ニュアンスはわかるけど、何の説明にもなっていない。つまり、いつも目的の場所や自分の位置の把握をこういう感じで行っているという事だ。それは迷うよ、ニュアンスでしかないんだもん。
 もう治らないだろうから、迷う事を前提にして対応する事にしよう。