不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

疾風スプリンター/友情・努力・勝利


 エースと、タイプの違う新人選手二人と、女性の選手と、マネージャーその他がいて、愛だ恋だ友情だ嫉妬だをめぐる感情のもつれがあって、勝利と敗北があって、成功と挫折があって、悩みもトラウマもあったりして、それら全部を自転車ロードレースにぶつけていく物語――。と聞いて思い浮かべられる展開全てが描かれており、あれもこれもどれもそれも詰め込んでてんこ盛りなので本来なら三ヵ月くらいの連続ドラマにしてもおかしくない。
 一方で、簡単に思い浮かべられるという事はパターンにハマっているとも言えて、そのまま描けばよくある話でしかない……と監督も自覚していたのだろう、「だいたい端折ってもわかるよね?」と言わんばかりに次々と飛んでいく展開を(次のシーンには関係ができており、次のシーンには数ヵ月経っており、次のシーンにはトラウマを克服しているなどなど)、ダイナミックな撮影で余すところなくお送りする、ダンテ・ラムの職人芸かつ力技に拍手しかない。こう書くとつまらなさそうなのだが、ポイントは的確で外さないから、むしろ前のめりに入り込めるほどだった。
 これだけ端折るということは、つまり物語は刺身のつまでしかなく、見るべきところはレースそのものなのだ。スタントを使わず俳優自らが演じたというレースシーンは、自転車をこぐ姿も、的確に捉えながら大胆に動くカメラワークも圧巻。レースもまたダイジェストばりの展開で毎度クライマックスのゴール付近ばかりを描いていたが、そのゴールを目指すためのスタートを正面から捉える瞬間をとっておきのタイミングでぶち込んでくるあたり、センス抜群。
 新春に見るにふさわしい、さわやかで、熱い映画だった。ただ、疑問が一点だけ。何であそこでバンジージャンプだったんだろう。