不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ本

 森田真生『数学する身体』(新潮社)。数学史兼自叙伝で、数学の歴史を振り返りながら、「身体」から生まれて抽象化し離れていく「数学」の次なる可能性、つまり再び「身体」と「現実」に近づく術を探る野心作。数学を扱っているものの、数式はほとんどなくて、門外漢でもわりと読みやすい。ただ、数学に興味ある人には少し薄いかもなとも思う。「身体」とは言っても捉えどころがない数学だが、アラン・チューリング岡潔、二人の数学者の生涯を追う事で具現化させている。それにしても数学者ってのは、数奇な人生の人が多いよなぁ。いろいろ読んでみたい。

数学する身体

数学する身体

 星野博美『みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記』(文藝春秋。三分の二くらいでストップ。何かを探したり真実を求めたりするのではなく、著者の「キリシタンについて知りたい」という欲求そのままをストレートに書いているため、読者も対象に同じくらい好奇心を持っていないとちとキツいかと。五里霧中といった感。だけど、そういった己の欲求に素直だったり、何を探しているか自分でもよくわからないまま、それでも前に進む姿は、俺の好きな星野博美だなとも感じたので、また違う機会に改めて読みたいし、次の本が楽しみだとも思う。 竹内好『転形期―戦後日記抄』(創樹社)原武史が手本にした竹内好の日記。さすがに論や思索はないけれど、実名でバッサバッサ斬っていく様や、原稿書きや原稿料のやりくりなどを含む日常生活、恒例のスキー旅行などまで書かれていておもしろい。公開日記の中では最上の部類かも。日記の入った全集だけ欲しい。
転形期―戦後日記抄 (1974年)

転形期―戦後日記抄 (1974年)