不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

白昼の活人/薄氷の殺人


 何はともあれ、序盤の床屋での長回しシーンに胸を鷲掴みされた時点で、俺はこの映画に取り込まれたのだろう。北野武を思い出す、ほんの少しの空白後の弾丸劇から始まり、極彩色で精度の高いショットの中で、ゆらりゆらめく雪や息、湯気の消え入りそうな白さが印象に残っている。静かな官能、唐突な暴力、思わず噴き出すユーモア、うまそうな食事、巧みな入れ替わり。上手いと下手がない交ぜの演出が独特のタッチを作り出していた(稚拙ではあるけれど、それが武器でもあった)。事件や展開、物語自体は平凡で流れとして存在するだけであり、色と音、イメージで全てを語る。ラストは蛇足にも思えたけど、言葉はなく、音と色とたった一つのアップで、事件の終わりを見せていて嫌いにはならなかった。タイトルロゴのダサさと、エンドロールの音楽センスには驚いたが。少しジャ・ジャンクーの『罪の手ざわり』を思い出させるものがあった。他にも影響受けた作品があるのだろう。グイ・ルンメイは、先日見かけた《「かわいい」には死の要素はほぼない。「きれい」には少しある。「美しい」とは死と生の混濁だ》という言葉そのままに見えた。