不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

白くてやわらかくてやさしいやつ/ベイマックス


 ほのぼの映画ではなくアクション映画という事前情報や、原題は『BIG HERO 6』でラストに編集が施されていたという事後情報や、オープニングの犬のアニメの内容がひどいという評判その他、周辺が結構喧しい作品であるが、作品それ自体の評価にはあまり影響ないと思う。二つ目の編集に関してはどうかと思うものではあるけれど、それだけで評価が変わるとも思えない。
 唯一血を分けた兄にして友達であるタダシを失ったヒロと、オタク仲間である友人を失った学友たちが、心と身体のケアをするロボット、ベイマックスを介して仲を深め、タダシの信念である「人を助ける」という行為を戦隊ヒーローという過剰な形で昇華させる――その構成はなかなかおもしろい。ベイマックスのもちもちした質感や、無表情なのに瞬きだけはする演出なども秀逸だった。だから、ロボットファイトや叔母などの要素を放り投げたままだったり、悪用を恐れてセーフティ機能をつけてないんかいとか、真犯人が短絡的に行動しすぎじゃないのかとか、ヒロが天才すぎないかとか、モチをもっと出せとか、そういった話の甘い部分は目をつぶろう。
 前半のガチャガチャした物作りのおもしろさ、壊れたものを直して使う大切さを描きながらの、ベイマックスとの付き合い+トラブルに巻き込まれるという二つのドタバタ劇は、東京に似て非なる都市の細部の書き込み含めてニヤニヤしながら見る事ができたけれど、後半はヒーローもののエピソードの継ぎ接ぎのような展開になってしまい、ワクワク感がどんどん萎んでしまった。特に、ヒロが各キャラのメイキングを一気に済ませてしまった箇所は、オタクであると同時に学生として各々自分たちが研究してきたものをヒロにあっさりと完成されてしまったわけだから、それでいいのかオマエらという気分になってしまった。
 それでも、ベイマックスの「もう大丈夫だよ、と言うまで離れられません」という設定や、それを活かしての一人の少年の「兄(親)離れ」、すなわち少年期との別れ、成長を描いているのはよかったんだけどね。
 最後に、ロケットパンチを発明した永井豪は、本当に偉大だなぁと思った事を言い添えておきます。マジンゴー。