不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ本の中から

 とりあえず三冊ほど。
 飯島洋一『「らしい」建築批判』(青土社。建築という分野は明るくないのに、いつも気になって本を手にとる。読んでみて、正直「なるほど」と思った事は少ない。さて本書だが、これもまたわからんとこもあったけれど、一気に読んでしまった。つまりそれほどおもしろかったのだろう。内容は現代建築家批判であり(特に安藤忠雄伊東豊雄)、建築/芸術論であり、ある種の資本主義/革命論。新国立競技場問題がよくわかった。個人的に、安藤忠雄は一時期好きだったんだけど、ある時にふと疑問に思った事があり、それへの回答が書かれていたと思う。これでもかこれでもかというほどの固有名詞の乱れ打ちと引用はちとキツかったけど。

「らしい」建築批判

「らしい」建築批判

 山本一生『哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和』(講談社。昭和の喜劇王にして日記で有名な、あの古川緑波の伝記。タイトルでこう言わせるほど、晩年は淋しく、あっけないものだった。芸能という華やかな世界で生きている彼を支えたのが、日常を綴る日記だったというおかしさと、そこに漏られている本音が醸す哀愁。ロッパ以外の同時代人に日記もよく読み込んでいる。が、あくまで日記によっているためか淡泊な書き方で伝記としての躍動感は薄く、ロッパの魅力が十分に伝わるとは言い難い。ただその淡泊さは、人生のドラマチックな瞬間(生まれた時や死ぬまでの日々など)を決して刻めないという日記最大の欠点そのものにも思えた。不勉強ながら、晶文社から出ている『古川ロッパ昭和日記』が、結構な部分が削除されている「日記抄」である事を本書で知った。まぁそれでもこれだけボリュームあるのだからすごいんだけど。いつか完全版出ないかな。無理か。
哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和

哀しすぎるぞ、ロッパ 古川緑波日記と消えた昭和

 ルー・バーニー『ガットショット・ストレート』(イースト・プレス細美遥子訳)。B級クライム・ムービーのような小説。深みや外連味はなく地味と言ってよいが、伏線や細部への目配せもあり、それが最後に集約するのが結構うまい。情に甘く、女に弱く、強くもなくて理性だけが武器の42のオッサンが主人公で、これがまたイカす。出てくる料理やホテルの説明が細かくて、おもしろかった。あと、みなが注目しているお宝が、本当に「お宝」なもので、しかも解説が言うには実際にこれをめぐってあれこれあったというのだから笑えた。
ガットショット・ストレート

ガットショット・ストレート