不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ小説

 辻原登『冬の旅』(集英社。坂道を転がり落ちる、どこまでも。『遊動亭円木』以来の辻原登の小説だが、なんちゅう気の滅入る小説だ。一応主人公はいるが、彼の周りにいた人たちの人生も描いていて、十者十様だけどみな灰色。小説の途中で参考文献が出てきたりと、これは誰の目線なのだろうと少々の戸惑いもあり。「餃子の王将」はじめ実在する固有名詞が多数出てきて、それが効いている。全体を通して暗鬱とするが、一方で文体や描写に妙な軽さ渇きがあるから不思議。作者の余裕と言えばいいのか。なんにせよ、寝る前に読む本ではなかったかな。

冬の旅

冬の旅

 アーナルデュル・インドリダソン『湿地』(東京創元社、柳沢由実子訳)。タイトル通り冒頭からやたら湿気が多いミステリー。アイスランドという国だからこその物語なのだろう、ことあるごとに「アイスランドでこんな事件は起こらない」といったセリフが出てきた。そうなのかね。つまらなくはないけど、ピンとも来なかったなぁ。これを薦めてくれたのは知人のシネフィルで「映画みたいにシーンが区切られているんだよ」と言っていた。何となくわかるけど、そこまで特徴的ではないような。続篇の方がおもしろそうだから、一応そちらも読むと思う。
湿地 (Reykjavik Thriller)

湿地 (Reykjavik Thriller)