不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

読んだ本の中から

 橋本治『橋』(文春文庫)。『巡礼』『リア家の人々』に続く(のかどうか知らないけど勝手に思っている)戦後史三部作。橋本治の戦後史ものに間違いなしと言っていい気がしてきた。簡潔に事実と人物を淡々と描く文体で、凝った表現も見事な比喩もないのに、おもしろい小説になるものなんだな。コラムと同じような体温で書かれているのに、できあがってくるものが全然違うから不思議。時代と人物に寄り添っていて一面やさしく読めるのだが、同時に社会・世間へのカウンターでもあって、読む者に押し付けてこないだけに重く感じる。どんな事でも、原因なんて一つじゃないし、単純でもない。そんな当たり前の事を忘れてしまうし、当たり前の事が書かれた小説が胸に響いてしまう。これまでは文庫になるまで待ってたけど、もうすぐ出る短篇集は単行本で買ってしまおうかな。

橋 (文春文庫)

橋 (文春文庫)

 仁賀克雄『決定版 切り裂きジャック』(ちくま文庫切り裂きジャックの名前に惹かれて手に取ったにもかかわらず、実は事件自体にはそれほどの興味があるわけではなかったりする。それでも惹きつけられてページをめくったのは、とにかく憑りつかれたとしか言えない著者の執念の調査・取材の熱からである。よくぞここまで調べ上げたものだなぁ。そして、これだけ丹念に調べたからこそ、ジャックの存在が事実でありながらファンタジーになったのだとわかったのだった。そういや『フロム・ヘル』、買っておきながら未読だ。これを機に読んでみるかな。
決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)

決定版 切り裂きジャック (ちくま文庫)