不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ本から

 内館牧子『きょうもいい塩梅』(文春文庫)。『アンソロジー カレーライス!!』に収められた一篇がすばらしかった事は書いたが*1、他のも読んでみたかったのでその一篇がおさめられた本書を読んでみた。「カレーライス」ほどのものはさすがに少ないが、いやはや、それでも名エッセイ集ですよこれ。どこを読んでも味わいたっぷり切れ味鋭し。『銀座百点』に連載していたもので、向田邦子を意識して気合入っていたそうな。その事が書かれたあとがきもまたよかった。内館牧子はかつて『週刊プロレス』に、「××は美しい」(××はレスラー名)として一選手を取り上げる連載を書いていた人としか認知していなかった。その連載もどんな内容だったか覚えていない。勿体ない事をした。他のも読んでみよう。

きょうもいい塩梅 (文春文庫)

きょうもいい塩梅 (文春文庫)

 粉川哲夫+三田格『無縁のメディア ― 映画も政治も風俗も』(ele-king books)。お二人とも国家や権力といったものを全く信用していないのだなぁ。自分は二人とは思考も視点も全然違うので(単純な右左という事ではなく)、納得はしないが理解はし、共感はしないが刺激にはなるという、おもしろい読書体験をした。本の作りは対談だが、実際はEメールのやり取りを対談の形にしたもので、そのためか全体的にいささか冗長気味だった。担当編集者によるあとがきが笑えた。紙メディアとwebメディアの試みの一つとも言えるかもしれない。ところで昨夜本屋で見かけたのだが、音楽雑誌の『ele-king』が花田清輝の特集を組んでいて驚いた(http://www.ele-king.net/news/002995/)。あまり読んだ事がないけど、前からこういう特集もやる雑誌だっけ? 
無縁のメディア 映画も政治も風俗も (ele-king books)

無縁のメディア 映画も政治も風俗も (ele-king books)

 藤山直樹『落語の国の精神分析』(みすず書房。これはおもしろかった。落語という日本独特のパフォーミングアートを見事に考察、分析、言語化している。わかりやすいので落語の入門書としてもいいかも。どれも興味深いけど、中でも「芝浜」論と与太郎考察が秀逸。立川談志への愛にあふれており、最後にある「ラブレター」もよかった。
落語の国の精神分析

落語の国の精神分析

 中山康樹ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄』(河出書房新社。音源はいくつか持っているが(むしろかなりお気に入りのミュージシャンだ)、本人の事はあまり知らなかったので序章から「え、そうなんだ」だらけだった。ややダイジェスト気味で展開が早いが、初心者でも楽しめる一冊。ジャンキーとは聞いていたが、生粋だったんだなぁ。