不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

聞こえぬ声を聞け

 『声をかくす人』(監督/ロバート・レッドフォード、出演/ジェームズ・マカヴォイロビン・ライトケヴィン・クライン

 リンカーン暗殺を巡る裁判。アメリカ初の女性死刑囚はこの時に生まれた。国家と法と人権、「正義」の言葉の重さと軽さ。劇中、検察官(ダニー・ヒューストン)がエイキン(ジェームズ・マカヴォイ)に言う。「戦時には法は沈黙する」。エイキンは応える。「そうあるべきではないです」と。『裏切りの戦場』でもある人が言った。「秩序と理念を護らねば(だから駆け引きを放棄し、攻撃する)」と。一匹と九十九匹と。その決断こそが政治家の仕事とも言えるわけで、安易に否定できない。しかし必ず切り捨てられる一匹は弱者なのもわかっているから、おいそれと納得もできない、できるわけがない。政治が九十九匹しか救えないのなら、残る一匹を救うのは文学だけでなく映画をはじめとした芸術しかないのかもしれない。