不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

今日も誰かを裏切って

 『裏切りの戦場−葬られた誓い』(監督・脚本・編集/マチュー・カソヴィッツ 出演/マチュー・カソヴィッツ、イアベ・ラパカ、マリック・ジディ)

 何故か『アルゴ』とセットで語られる事が多い、既視感すら覚える戦場と政治、法とモラルの話。原作タイトル『La morale et l'action』(モラルと行動)を映画化に際し(原題)『L'ordre et la morale』(命令とモラル)にした事からも、個人の行動ではなく、軍隊ひいては政治システム、政治家への渾身の一撃である。カウントダウンは、心が折れる足音でもあり、息詰まる壮絶な総攻撃は映画の一つの戦闘シーンと、一つの悲劇が混同している、複雑なものであった。
 フィリップ(マチュー・カソヴィッツ)とアルフォンス(イアベ・ラバカ)の駆け引きに使われる言葉は誠意であり、言うならばお互いが属する集団の民意を反映させたものである事を考えるならば、あの光景は民主主義を体現している事になる。理想的なまでに。それを踏みにじったのが、いま現在使われているその他もろもろがない交ぜとなった民主主義であるという皮肉。
 「選挙中の政治家を信用するな」というセリフがあるが、それ以外の政治家が果たして信用できるのか疑問ではある。しかしながら、チャーチルの言葉を引用するまでもなく、少なくとも我々は最悪にして最善の制度である民主主義の下で生きている。クソのような政治の下にあるクソッタレの社会にいる事を自覚しているとしても、そこでやっていく以外に方法があるのだろうか。選挙を、政治を、民主主義を否定するのは簡単だ。だけど、それで終わりにするわけにはいかないだろう。唾棄すべき人間は常にいる。こういう連中にどう立ち向かえばいいのか、途方にくれる。それでもやるしかない。フィリップの最後の独白も、その決意の表れだろうと思う。
 そう思わないと、やっていけない。