不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

推理よりダンスを

 シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(監督/ガイ・リッチー、出演/ロバート・ダウニーJr.、ジュード・ロウノオミ・ラパスジャレッド・ハリスの感想を。

 原作からさらなる換骨奪胎を試み、前作で受けた要素――つまりホームズとワトソンの、なんですかブロマンスと言うそうですが、ともかくそれを増幅加速させるだろう事は目に見えていて、そこにモリアーティ教授が加わるとなれば友情と殺意の三重奏が奏でられるのだろうと思っていたら、モリアーティ教授がこちら側にあまり絡んでこなかったのが拍子抜け。しかも原作はどうか知らんが、金儲けだけが目当ての小さな人間に見えてしまって、天才というよりは用意周到なオッサンにしか見えなかったのが残念だね。「正体不明で、自らは手を汚さない犯罪立案者」の割には、表面的な自己顕示が多すぎる気もしたし。あと、これは勝手な思い込みだが、ジャレッド・ハリスのようなずんぐりむっくりよりも細い外見をイメージしていたよ。
 前作を見ていたので、推理や謎解きなんてものがないのは承知の上、遥か彼方に置きっぱなしにしつつ、あれもやってこれもやって、あれもやらなきゃこれもやらなきゃと詰め込みまくり、かなりの無茶と無理をしつつ(させつつ)も、貼っておいた伏線はそれなりにきちんと回収し、なおかつうまいことオチまでつけたのだから、ガイ・リッチーたいしたものじゃないか。
 相変わらずのガチャガチャ画面だが、細かくカットをつないで、スローモーションもうまい具合に使っていたので意外とすんなり見られる。眼は疲れるけれど。予告でも使われた森での銃撃戦は、本筋の進行を妨げるくせにたっぷり描写されているわ、迫力もそれなりにあるわで、何だか笑ってしまった。
 男性二人のコンビを見れば、やれイチャイチャだの、やれBLだの、やれブロマンスだのと言われる事が多く、時々辟易していたのだが、今作に限って言えばむべなるかな。セックスを介在させずにロマンスを作り上げて、いや、これはもはやロマンスを通り越えた純愛ではなかろうかという気がしてきた。裏話ではこの二人はカメラなしでも仲がいいとか。喜ばしい事ですね。
 それにしてもロバート・ダウニーJr.は好みど真ん中の男優だなぁ。彼とジュード・ロウがやる以上、このシリーズを見続けていかねばならないが、さて、一応「?」付きのエンドなので次回があってもおかしくないのだが、世界を股にかけた壮大な話はやってしまったしモリアーティは死んでしまったしと、このあとはどうするんだろう。まさかアメリカにでも飛ぶんじゃあるまいな。古代遺跡なんかが出てきたら、もはやホームズではないけれど、そもそも「シャーロック・ホームズ」の体裁をとっているだけなので、それはそれで問題ないかもしれないな。好きなようにやってくれたまへ。