佐野眞一『怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること』(講談社)を読んだ。『G2』に掲載された記事に大幅加筆されたもの。副題が野暮極まりない。映画でも本でも、副題で説明しようとする傾向はなんとかならんのだろうか。
たっぷり時間を使った取材、時に斬り込み、時に挑発するインタビューのやり取りはスリリング。『大鹿村騒動記』のヨボヨボの姿を見て、演技とはいえ大丈夫なのかいと思ったものが、これを読む限り頭はまだまだ鋭いよう。こちらがギョッとするほど冷徹な言葉を放り投げたり(たとえば息子、佐藤浩一の評価)、エッと思うような角度の視点を見せてくれたり、達観諦観の極地のような思考をポンと置いたり、たいそうおもしろい。ルポ的な半生部分の修羅場っぷりはすごい。
映画について聞く時に、解説や分析が結構あったけど、全編三國連太郎へのインタビューだけでよかったのではないかな。まぁある程度は必要だと思うけれど。その辺の配分は難しい。
と、まぁ読みごたえはそこそこあるものの、さすがの佐野眞一でも三國連太郎を掴み切れなかったように読めた。三國連太郎だけでなく、熟練の俳優はなかなか裏や底を見せてくれない。一度、柄本明と飲み会の席でご一緒した事があるが、全く素を出しておらず、なんだか怖いとすら思った。本人の言葉は何よりの資料だけど、本人が生きているから本質が見えないという事もあるのかも。
いやはや、おもしろいジイさんだった。
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