不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

BETTERな世界で未来を思う


 『未来を生きる君たちへ』(監督/スサンネ・ビア、出演/ミカエル・パーシュブラント、トリーヌ・ディルホム、ウルリク・トムセン)。「理解なき暴力」に対して、復讐か対話か、赦しへ辿りつく事ができるのか。アフリカとデンマークを舞台に、ミクロとマクロ二つの視点でそれらを見つめる。
 とても生真面目な作品だと思うがテーマが見え過ぎているし、構築もしきれていなかったのが残念。何より「対話」の限界こそあれど、その先にあるだろう「理解」(≒赦し)に辿りつく前にヘトヘトになってしまっていて、その「疲弊」こそが描きたいものだったのかもしれないけれど、自らの行為ともたらした結果に対する責任がここにはなく、フィクションならばあと一歩踏み込んでほしかった。アフリカパートがやや陳腐だったのも残念。ただ、暴力という人間だけの問題に神を登場させずに貫いたのはよかった。
 原題の「HÆVNEN」は復讐の意だが、英題は「IN A BETTER WORLD」で皮肉が利いている。BETTERな世界にいる人間が復讐か対話かを問うている時に、WORSEな世界にいる人間は何を選べるというのか。それに比べれば邦題はいささかセンチメンタルというか、ピントがずれちゃっているなと思う。