『メカニック』(監督/サイモン・ウェスト、出演/ジェイソン・ステイサム、ベン・フォスター)。痛快アクションを期待したのだが、むしろ愉快。オープニングが全くそそられない演出なので大丈夫なのかいと心配になり、その心配通りフックが全然ないものだからシビれたりゾワッとする瞬間はないのだが、逆にドラマにも感情にも溜めや起伏が一切ない演出がだんだん快楽になってくる。
はっきり言って、お世辞にもセンスがいいとは言えない。不必要に人物アップが多くて、アクションなのに全身や動作が見えないのがいただけないし、女キャラは適当で、せっかくの御大ドナルド・サザーランドの使い方も勿体ない。ベン・フォスターの使いどころだけは熟知したかのように、的確だったけれど。ステイサムさんは相変わらず。
ピンチもピークもなくツツーッと滑るように映画は走っていって、何があっても「実は準備していた」という一言で万事OKなので、ラストのあれやこれやも含めて笑いながら納得してしまった。あと、余談ながら、しつこく出て来る「周到な準備が勝利を導く」という格言は、動く前に考えてしまうタイプの人間としては、不覚にもグッと来てしまったよ。