不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

大鹿村行った事あります

 きっちり書きたかったのだが記憶が薄れつつあるので、とりあえずざくっと感想を見た順に。やっぱり見てからある程度の間に書いておかんといかんなぁ。

 大鹿村騒動記』(監督・企画/阪本順治、脚本/荒井晴彦阪本順治)。原田芳雄の遺作云々関係なく、愛嬌と人情がつまったすばらしい映画と断言する。それでいて演ずる事、現実と虚構の混濁などのテーマがあってなかなか味わい深い。
 役者陣はみんな楽しそうに演じていて、ナイスな演技。それぞれがキャリアを積み、確かな演技力を持っている大ベテランばかりなのに、くっだらない喧嘩や会話を繰り広げていて笑いがこみあげて来る。特に原田芳雄岸部一徳のコンビが、寝取り寝取られというドロドロの関係にもかかわらず、軽やかなじゃれ合いでニタニタしてしまった。
 役者が「素人」を演じ、その「素人」が劇の中で「役者」となって違う演技をする。ある種のメタ的構造を作りだす事で、人間と役者、演じる事の繋がりや深みを表現している。現実と虚構は違うものでありながら、互いに影響し合っていて、奥深い作品となっている。
 そして、やはり原田芳雄の演技がよかった。おそらく撮影時期は既に病に冒されていた事だろう。周囲がどれだけ把握していたのか、監督が何を考えていたのかは知らないし、知る必要もない。映画で見せたあの後ろ姿が遺影なのだ。昔の作品を思い返している人が多いけれど、原田芳雄は生涯現役だったのだ。新たな代表作は最後の代表作となった。それは見事な群像喜劇であった。