不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

「三国無双」実写版


 レッドクリフ Part I』鑑賞。監督、ジョン・ウー。出演、トニー・レオン金城武、リン・チーリン、チャン・チェンヴィッキー・チャオフー・ジュン中村獅童チャン・フォンイー
 「三国志」は全然知らない。登場人物の名前をぼんやり覚えているくらいだ。だが、始まる前に状況説明があるので大丈夫だし(それが日本語だったので「あれ、吹き替え版なの?」と少し焦った)、「三国志ってこういうのか」と新鮮な気分で見る事ができた。
 2部にわけたくせに、145分と長い。長いが、あっという間に終わる。「最初からクライマックスだぜ!」とでも言うような怒涛の戦闘シーンから、次から次へてんこもり。戦闘、策謀、空、大地、壁、そして鳩。
 うん、鳩。やっぱり白鳩が出てきたので笑ってしまったよ。しかも重要な役目として。どんだけ鳩が好きなんだよ、ジョン・ウーは。ぜひ、二部でも使っていただきたい。
 80万の大軍はCGを使っていたとしても圧巻だったし、馬を使った戦闘シーンは迫力があって楽しんだ。馬の駆けていく音というのは、何であんなに勇ましく聞こえるのか。
 「三国志」の世界なんて、現代に生きる人間が想像をたくましくしていろいろ描ける事だから、どう描いたっていいんだけど、滑稽だなとしか思えない箇所がありすぎた。
 諸葛孔明ってなんもしてないような。1800年前の琴がベースに見えた。その琴の音の解釈がお互い違ってたらどうすんだよ。なんで将軍クラスが一人一人突っ込んでいくんだよ。何でそんなに強いんだよ。素手で馬にタックルすんな。馬が難産で大騒ぎしたわりには、がんがん人が死んでいくな。つうか、劉備玄徳の影うっすッ!
 おもしろかったと同時に、笑えてしまった。
 この映画でジョン・ウーはリアリズムなんて、遠くへ置いてきたのだ。『男たちの挽歌』や『フェイス/オフ』にあった、人間の持つ情念みたいなものは全く感じられない。むしろ「三国志」という英雄譚を、ドラマチックに、「スター・ウォーズ」のように描いている。つまり、登場人物のキャラクターを異様に際立たせ、それでいて心情心理を極めて薄く描写していた。
 多分、「三国志」には英雄とか、英傑とか、戦うとか、圧倒的な差を跳ね返す勇気と智慧とか、友情とか、愛とか、正義とか、そういった大きなテーマがたくさん詰め込まれているのだろう。長大な物語から、映画のタイトルにした「赤壁の戦い」だけを抜き取る事で、登場人物が主役ではなく、あくまでも「戦い」が主役なのだ、という事を意味している。
 ただ、『1』ではそこにたどり着いていない。だから、ジョン・ウーが描きたかったものというのは、まだよくわからない。続篇見るしかないな。
 でも、実は見ていていちばん思ったのは、「あー、黒澤映画見てー」だったりするのは、秘密。