不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

人生はどつぼの中


 『イン・ザ・スープ』を見に行く。監督・アレクサンダー・ロックウェル、出演・スティーヴ・ブシェミシーモア・カッセルジェニファー・ビールス。ちょい役でジム・ジャームッシュも出ている。1992年のサンダンス映画祭でグランプリを受賞した作品。15周年記念だとかで、シアターNでレイトショー公開されたのだ。
 開演前、百瀬博教×安西水丸×鈴木隆一(製作総指揮)×花田紀凱トークショーがあった。百瀬博教安西水丸がこの映画の大ファンらしいのだが、ゴツ過ぎるメンツじゃなかろうか。しかも時間はたった15分。終電時間などを考えてだろうが、いくらなんでも短すぎる。一人4分しか話せない。案の定、身の無い話だけで終わってしまった。勿体無い。このメンツなら一時間でもいけたのに。ま、仕方ないか。あくまで映画がメインだ。

 舞台はクリスマスのニューヨーク。映画を作りたい青年アルドルフォは、隣に住むアンジェリカをヒロインに映画を撮る事を夢見ている。しかし制作費がなく、家賃も払えない毎日。そこで、自らの脚本を売りに出したのが、そこにジョーという初老の男が現れた。しかし、資金調達という理由で彼に怪しげな仕事の片棒を担がされたアルドルフォは、次第にどつぼ(=イン・ザ・スープ)にハマっていく。

 何でも監督の実話が基らしい。どっからどこまで実話なのかが気になる。
 チラシには《人生は“イン・ザ・スープ”(どつぼにはまる)なことだらけ……でも、心はきっとあたたまる》とあったが、ちょっと違う気がする。俺としては「人生は基本的に“イン・ザ・スープ”」だと思う。そして、「それでも楽しいよね」となるんじゃないかな。
 物語の展開は結構シュールだ。大衆受けはしないし、感動とか「人生っていいなぁ」という感想は抱かないと思う。だけど、見終わった後に残る感覚は、独特で良い。まぁあったまると言えば、あったまるのかな?
 スティーヴ・ブシェミ演じるアルドルフォがかわいい。あんな気持ち悪い顔をしていて(失礼)、やたらと妄想癖のある内気な青年なのにかわいく見えるんだから、凄い。
 シーモア・カッセルのお茶目なジジイっぷり(お茶目というレベルではないかもしれないが)、ジェニファー・ビールスのセクシーさと、俳優陣が味わい深くてよかった。何とも小粋な映画だ。ステキ。
 以前はビデオで見たのだが、やっぱりスクリーンで見ると味わい深さが違う。映画は映画館で見るのが一番ですよ。
 ようやくこの映画もDVD化されるそうだ。DVDではモノクロバージョンとカラーバージョンの二つが収録されるそうだが、モノクロがいいに決まっているではないか。モノクロだからこそ、クッションの羽が飛び出し部屋中に舞っているシーンや、雪の降る中、屋上で踊るジェニファー・ビールズの姿が美しいんじゃないか。カラーなんていらないから価格を下げてくんないかな。
 日本もクリスマスイブだね。