不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

一二月一六日、目玉の親父、ナポレオン

 久方ぶりに一日に映画二本を見る予定を組む。数年前は四本はしごした事もあるというのに、こんな調子になってしまってと嘆いても仕方がない、二本見られるようになったのだと思う事にしよう。立川へ行き、まずはシネマシティ2で『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。評判の高さと姉からの「見ろよ」というプレッシャーからの鑑賞。妖怪+横溝正史に戦争と国家への怒り、家族の否定と肯定をぶっこむ剛腕映画はそれなりに楽しんだし、描かれなかった余白からキャラ(カップリング)に夢中になる人がいるのもよくわかるが、映画としてはまあまあの出来かなというのが正直な感想、大枠はともかく細部が甘く、雰囲気は作るが繋がっていない。何で最初の列車で親父は水木に話しかけたの? 死相出てるやつには話しかけるのか? それほど詳しくないものの水木御大の精神を引き継ぎ、原作へと繋げるのはうまいけれど、個人的には終始「……惜しいな」と思ってしまいました。

 猿田彦珈琲で一休みしてから、今度はシネマシティ1に行き、リドリー・スコット監督作『ナポレオン』。こちらは『ゲゲゲ』の逆でかなり辛い評、酷評を目にしていたので期待値をかなり下げて見たのだが、メッチャクチャおもしろいでやがんの。さすがに傑作とは言わないし、何なら凡作と言われても納得できそうなのに。こんな感想を持つのは少数派であろうとも自覚している。屈託と倦怠を纏ったナポレオンを描きつつ、マチズモの滑稽さから始まり、戦争、そして人類の愚かさをストレートに描いている。会話の不穏さがよかったし、戦闘シーンにいたってはさすがの見映え見応え。十九世紀にまだこんな戦い方だった事を思うと、そこから産業革命などで一気に戦争も近代化していったのだとわかる、技術の進化が戦争を進化させる皮肉と愚かさ。英雄でも何でもないな、ナポレオン。酷評もそれ自体はそうだなと思うのだが、何が私の琴線に触れたのか、その事含めておもしろかった。

 見る前見た後でずいぶん両極の反応になってしまった二本であった。