不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

七月二一日、怪物

 仕事で出かけるカミさんを見送った一時間後くらいに外出。本調子にはほど遠いけれど、座っているだけだしなと思って『TAR』以来、二ヶ月ぶりに映画館へ。映画館で映画を見ると、いつも「映画っておもしろいな、映画館っていいよな」と再確認してまた行きたくなる。作品は見逃していた『怪物』を滑り込みで。

 坂本龍一の音楽がよすぎて、特にラストがあの曲だったから危うく感動しかけたけれど(いや、別にしてもいいのだが)、改めて作品を振り返ってみると「ようできとる!……それで?」と思ってしまった。絡んだ複雑な糸を解さずに、しかしわかりやすく描いた脚本はお見事だし、演出、撮影、演技もすばらしいが、高レベルだからこそより「それで?」という思いが強くなる。内容だけでなく、タイトル、トレーラー(宣伝)も含めて、すぐれて「先入観」の映画である、人は生きていく上でなかなかそこから抜け出せないものである、と同時に私がよく引用する「事実が必ずしも真実を語っているとは限らない」(『探偵物語』)、そういう映画だ。

 しかしながら「先入観」の映画とは、すなわち「観客にそう思わせるように仕組む」事を意味しており、ではその誘導は本当に「先入観」なのかと疑問になる。「そう見せようとしている」映画で「そう見る」のはそりゃそうなるなと、随分意地悪だなとも思ったのだ。本作はカンヌ国際映画祭脚本賞の他にクィア・パルム賞を受賞し、それを踏まえて是枝監督は「LGBTQに特化した作品ではない」と発言したのだが、確か特化した作品ではないのと同時に、これ以上の作品への先入観を作りたくなかった、つまり客の意識をコントロールしたかったのではないか、これは邪推です。子役が抜群によかったのは言うまでもなく、一方大人も田中裕子など力演だったが中でも前から好きな東京03角田の演技がいい、シリアス角田。

 もう一本のつもりだったが、昼飯を食って茶を飲んでいたらガクッと身体が重くなったので(プラス少し呼吸も苦しい)、こりゃいかんと帰る。平日だからと予約をしておかなくてよかった。帰宅し、あとはゲーム。


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