不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

ダヴィド・ラーゲルクランツ『闇の牢獄』/あなたがわからない

難儀な二人がバディとなって事件解決する北欧ミステリ『闇の牢獄』 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

 これを読んで早速購入し、ズイズイズイと読み進めた。著者本人もそのつもりで書いたそうだが、いわゆるホームズ/ワトソンの派生コンビで、歪なところもある反骨の女性刑事と、元ピアニストで双極性障害の心理分析官。現代の「階級」を組み込み、単純なバディでも仕事仲間でもないねじれた関係にして物語におもしろさを加えている。サッカー審査員がサッカー選手の父親に殺されるという、それだけでも話題になりそうな事件が、そのうち国際的な問題へと繋がっていくダイナミックな展開は読みごたえあるものの(アメリカはろくな事をしないという共通認識があるのだろうな)、その舞台の大きさに著者の筆がついていっていない感がある、状況を書いているだけでいささかスリリングになりきらなかったように思う。

 私はスティーグ・ラーソンの『ミレニアム』三部作を読んでおり傑作だと思っているし、デヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴンタトゥーの女』も隙あらば部分的に見直したりしているほどだが(ダニエル/ミカエルとルーニーリズベットのコンビが大好きなのだ)、作者亡き後を引き継いだダヴィド・ラーゲルクランツによる『ミレニアム4』はそこまででなかったのもあって(だから映画も見ていない)、逆にこの作者かと一瞬ためらったものの、北欧ミステリを久しぶりに読みたいと思って読んでみた。そして、モフさんが書かれているように主人公の一人レッケを脳内でマッツ・ミケルセンに演じさせる事で、結構楽しんでしまい、わりと満足する読書になったのであった。次作が出たら読む気ではいる。