不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

『絶版本』/この本が絶版になりませんように

 「あなたがいまこそ語りたい『絶版本』なんですか?」という企画の、柏書房が運営するnoteの連載に書き下ろしを加えた一冊である。ちょうど早川書房周辺での絶版本をめぐる炎上事案があった際に存在を知ったがその時は読まず、このたび書籍化されて一気に読んだ。私がなぜこの一冊を取り上げるのか、そしてなぜこれが絶版なのかという思いが詰まっていて読み応えがある。この中で私が持っていたのは原武史が選んだ竹内好『転形期ーー戦後日記抄』(創樹社)だけで、一番読みたいのは伊藤亜紗選のレム・コールハース『プロジェクト・ジャパン』と、鷲田清一選の『九鬼周造全集』「月報」である。前者は図書館にあるが後者はまとまっておらず全集を一巻ずつ借りねばならない。なかなかしんどい。そもそも九鬼の本をほとんど知らない。とりあえず評伝ないのかと思って検索したら、ちょうど来月講談社学術文庫から入門書のような本が出るそうで、こういう縁にはのっかる事にする。さて、自分の「絶版本」は何かあるかなと読み終えてから考えながら本棚を眺めているが、そこまで思い入れのある本は少ない。あえて言えば橋本治『ああでもなくこうでもなく』とか坪内祐三『文学を探せ』とかだろうか。