不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

バーにて

 時折通る道にある細いビルの入り口に看板が置かれていて、ふと見たらピザとパスタのメニューだった。こんなところにイタリアンがあったっけなと眺めていたらよさげだったので入った、三階まで上がって開いているドアの横に掲げられている看板を見たらBarとあった、気づかないわけだ。中に入ると店主が一人だけいて、「いらっしゃいませ」と言った。聞けば従業員は自分一人だけだから休んで協力金をもらっても大丈夫だったのだが、イタリア料理屋で修行していたのでパスタなどを出してみようかと思いついたそうだ。小海老と大葉のオイルパスタを頼んだ、カミさんはトマトのアラビアータ、どちらもうまい。十九時前に入店し、客は我々だけだった、いつの間にかラストオーダーの時間だった、バーの時間にしてはあまりに早い。食べ終わって去ってもよかったのだが、酒が出せないからとノンアルコールカクテルのメニューが豊富だったのでカミさんと一杯ずつ頼んだ。店主は言う、「この機にノンアルコールカクテルを改めて勉強しているんですけど、おもしろいですね」。ローズシロップとグレープフルーツとジンジャエールのカクテル、うまい。ゆっくり飲む。店主の後ろにずらりと並んだ酒の瓶はしばらく開けられる事がないのだろう。「ごちそうさまでした」と俺が言う。「有難うございました、また来てください」と店主が言う。「また来ます」と俺が言って階段を降りて行った、また二十時前だった。明日からはオリンピックのための連休が始まる。