不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

名前がわからない

 どうにも喉の痛みと咳が治まらず、このまま熱もぶり返すような気がするので会社近くの耳鼻咽喉科に行く。初めてだがネット予約をすればあまり待たない。待合室の張り紙によると院長は拇指が慢性脱臼になり耳をつまめなくなったので引退し、いまは別の人が後を継いでいる、おそらくその後継の人が見てくれた。「耳がつまめないから引退」というのは、耳鼻咽喉科業界ではよくある事なのだろうか、どんな職業でも職業病というものはあるものだが。やはり喉はまだ腫れているとの事で、薬を出してもらった。先日、熱を出した行った病院からは薬は二種類しか出なかったのだが、ここからは六種類も出て、少ないのも不安だが多いのも心配になる。あとで姉から耳鼻咽喉科は薬が多いものだと教えてもらった、そういうものなのか。
 診察してもらっていたら「これまでよく喉から発熱しませんでした?」と聞かれて、どうかな、覚えてないですとその場では答えたけれど、ルゴール液を塗られて、あの、名称がわからないんだけど、ゴム製のマスクをしてそこに繋がった管から気体の薬を喉に入れるあの装置で薬を吸っていたら、幼少期の記憶が甦ってきた。ガキの時は結構頻繁に耳鼻咽喉科に行っていた、喉が腫れたからなのか別のところに問題があったからなのかは思い出せない、もしかしたら喉からの発熱がよくあったのかもしれない、いまでも滅多に熱が上がらないが上がる時は高熱だったのは喉からのものだったのかも。ガキの時に行っていた耳鼻咽喉科は妙に薄暗く、診察のところだけに光が当たっていて、いまも苦しいがここに来ても苦しい思いをするからと、たいそう嫌がっていたはず。苦しいというのは、たぶん喉や鼻をいじるから苦しかったわけで、ルゴール液を塗るのなんてその代表例だ、患部なのだから触るのは当たり前だけど子供の時はそんな事は理解できない。
 これを書いていてさらに思い出したのだが、家族で住んでいた頃、隣り駅前に評判のいい耳鼻咽喉科があって、行ってみたら確かによかった。ある時、耳鳴りがやまなくなって行って出された薬が液体の飲み薬だったのだが、かなり量がある上に、苦いとか、甘いとか、そういうのではなく、しかし言葉で表現しづらく仮に表現するとしたらまずいとしか言いようのないような味で、だからといって飲めないというほどのまずさではないのがまた憎たらしい。処方箋を出した薬局の薬剤師が「これ、まずいんですよね」とわざわざ言ってきて、それでも「耳鳴りがなくなっても、絶対に全部飲み切ってください」と厳命してきたので、がんばって飲み切った覚えがある。言いようのない味だった事は覚えているが、何て名前だったかは忘れた。耳鳴りは止んだ。