不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

アンダー、サンダー、テンダー/なんだー、かんだー、やってんだー

 チョン・セラン『アンダー、サンダー、テンダー』(クオン、吉川凪訳)。ぬああああ、と読みながら、そして読み終えて悶絶するほどすばらしい青春小説であり、同時に秀逸な郊外小説、打ちのめされる、何に、己の過去か、青春か、こんな青春はなかったけれど、青春と呼べるあの時期に。不定形で不安定な私と私たち、触れれば色が変わり、時に壊れる関係、少年少女の青春の終わりと人生の始まり、そして大人たち。構成も文章も巧みで、読む手が止まらなかった。特にあの映像を流すくだりは、何だか、目の前でそれを見ているような気持になって、頭グルングルンになってしまった。映画にできそうだが、あのパートは肝なだけに難しいかも。
 普段読まないし、別に自分の過去を懐かしんだとしても帰りたいとは思わないけれど、優れた青春小説というものは、何でこうも共鳴(共感ではなし)してしまうのだろう。特に著者のチョン・セランはほぼ同年代で、むろん国は違うのだけれど、近しいものは感じた。他の小説も読んでみたいけど翻訳はされていないようだ。期待して待つ。これは原題『これくらい近くに』より、著者が考えたこのタイトルの方がええです。クオンのこのシリーズ、やはり装丁がよくて、ピンクの骸骨がピッタリ。
 そして思い出すのはハイロウズ“青春”、ベタすぎだけど、口ずさむ。

アンダー、サンダー、テンダー (新しい韓国の文学)

アンダー、サンダー、テンダー (新しい韓国の文学)