滝口悠生『高架線』(講談社)。次の入居者を自分で探す事が条件の格安アパートの一室をめぐる物語。それぞれがそれぞれの言葉で一つの事を語り、そうする事でそれぞれの違いが見えてくる。語りに身を任せる感じが心地よく、これはなかなかよい読書体験をした。おもしろかった。滝口悠生、『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』『『死んでいない者』と読んできたけど、作品を追うごとによくなっている気がするな。先が楽しみ。本作は装丁もナイスでした。そういえば『新潮』に掲載された「高田馬場の馬鹿」はどうなったんだっけと調べてみたら、本書の前に出た『茄子の輝き』に収録されているそうなので、そちらも読んでみよう。
ところで、帯に片岡義男(と鴻巣友季子)が推薦コメントを寄せているのだが、この片岡義男は長い書評の一部らしく、読了後に読んでみたのだが、これがまたすごかった。冒頭30ページしか読んでいないのに、ここまで物語の焦点を繋げて書けるのか。全部読んで書くよりも(たぶん全部読んでから書いているとは思うんだけど)、この小説のポイントを突いていた。いやはや、恐るべし。
- 作者: 滝口悠生
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/09/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (6件) を見る