北田暁大・栗原裕一郎・後藤和智『現代ニッポン論壇事情 社会批評の30年史』(イースト新書)。論壇とあるが基本的にリベラル左派の事情。ポイントはどれも知っていたけど、流れ繋がりが掴めるし、問題点着眼点もよくわかって、昨今の言論事情を把握するのに最適な良書。お三方とも冷静で、おもしろい。フリートークみたいなのもよかった。北田氏ってTwitterでしか知らなくて、ちょっと敬遠していたんだけど、鼎談を読む限り、きわめて真っ当である。そういえば『ゲンロン』で山口二郎が入った鼎談を読んだが彼もそこでは(まだ)まともで驚いたな……。なんだろう、Twitterは人をおかしくさせるのか。他にもTwitterで幻滅した人って何人もいるし。
結論としては、リベラル左派は経済をもっとちゃんと考えろ、「反」でまとまるのではなく個々も見ろ、人の振り見て我が振り直せ、といういたって真っ当な意見。特に経済に関しては、かなり痛烈に批判しているので耳が痛い人は多そう。内田樹はこれを読むかな。読まないか。読んでも何も思わないか。まぁそうだろうな。
後藤氏の「麻薬としての言論」という指摘はとてもおもしろかった。これだけで本を書いてほしい。そしてこれだけ喋ってきた最後に栗原氏が、「これからも自分勝手にやっておくべきことをやります」とあっけらかんと言うのがおかしかった。その姿勢、俺は買います。本書はリベラル左派への(愛ある)手厳しい批判になるわけだが、実は保守右派にもこういう鼎談が必要だろう。この安倍政権期で相当グチャグチャになっているのだから。ただ、この三人みたいに冷静に話ができる人がいるのかというと……いない気がするな……そうなるとそっちの方が問題ではなかろうか。
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花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION (ちくま文庫)
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本当に敵か味方か、白か黒かしかない。保守右派は少しでも政権批判をすれば反日・売国奴、リベラル左派は少しでも政権の評価をすればネトウヨ、そんなレッテル貼りばかり。「麻薬としての言論」がSNSによって効果増幅されている感じだなぁ。