ライアン・デンソン『スパイの血脈 父子はなぜアメリカを売ったのか』(早川書房、国弘喜美代訳)。ロシアに情報を売ったCIAの父と、捕まった父に代わりスパイの役目を果たした息子のノンフィクション。血脈というので、何世代もいるのかと思われそうだが、基本的には父親と息子だけの話。
ものすごく細かく(詳しく)調べて書かれているので、かなり冗長。そのため転がる瞬間や、スパイ相手とのやり取り、逮捕のシーンなどでドキドキするようなサスペンスは薄かったんだけど、実は一番読み応えがあるのは息子が捕まった後の諸々。尋問、裁判、更生まで、さながらカルト宗教からの脱会のようで、父の呪縛がいかに強かったのかがよくわかる。金の為に祖国を裏切る事、息子にスパイをさせる事、父親に愛されたいと願う事、認められたいと願う事……かなり歪だけど、これはまぎれもない父子の物語である。残念なのは、最大の疑問「何故、息子にスパイ行為をさせたのか」は謎のままである点。父が出てくるのは70過ぎ。
ところで帯文によると、ロバート・デ・ニーロ主演で映画化されるそうだが、どちらかといえば息子の方が重要な役になると思う。では誰がいいかというと、ベン・アフレックである。冒頭の写真を見ていただければわかると思うが、顔も似ている。
スパイの血脈──父子はなぜアメリカを売ったのか? (早川書房)
- 作者: ブライアンデンソン
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2017/05/15
- メディア: Kindle版
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