不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

ゴースト・イン・ザ・シェル/私のゴーストは囁かない


 本作を見ている間はずっと実写化のイメージビデオを眺めている気分になった。原作漫画も、アニメは映画もテレビシリーズもほとんど見ているくらいには『攻殻機動隊』は好きなのだが、ある程度の脚色・アレンジは別に構わないのだけど、愛ゆえのオマージュというよりも、原作の評価の高さに臆してしまったがゆえに原作のラインを丁寧になぞっているだけの部分がそこかしこにあるぶん、逆に歪さを感じさせてしまったように思う。ビジュアルに至っては原作や『ブレードランナー』が見せてくれた近未来そのままで、ノスタルジーすら抱いてしまったよ。
 人間と機械、現実と虚構、過去と現在、個と全体、企業と国家といった二項対立の先にあるはずの新たな地平線に足を延ばすような原作に比べると、20年経っているのにその足元に止まっていたのは些か残念だった。家族やらロマンスやらの要素もたいへんに中途半端。スカーレット・ヨハンソンの美貌とスタイルは堪能したけど、どうにも脆さが目立ってしまい、少佐の寄る辺なさとハードボイルドな鋼の精神と茶目っ気がないの残念無念でした。よろしくない評判ばかりを見たビートたけしの演技だが、個人的には悪くない、いや、よかったとすら思ったよ。滑舌はともかく、銃を撃つ瞬間だけ武映画そのものだった。