山下澄人『しんせかい』(新潮社)。芥川賞受賞直後のタイミングで読むとは思わなかった。夢うつつな気分で思い出話として過去形で語られているんだけど、一人称から三人称になったり、視点がグッと動いたりと不安定で、ほんとうが作り話になるように「思い出している」事は強く感じられる。「ぼく」の名前が「やましたすみと」だから、つい私小説的に読んでしまうが、しかしフィクションかもしれないし、思い出なのだからほんとうかもしれないし、思い出話なのならやっぱりフィクションかもしれない――という現実と虚構の境界線のあやふやさがおもしろい。
併録されている「率直に言って覚えていないのだ、あの晩、実際に自殺をしたのかどうか」(タイトルいいな!)は、これまでの改行多めから打って変わり、一気に捲し立てるような文体で、現実の道をガツガツ歩いているような感覚がおもしろい。この二編が一冊にまとまっているのがいい。『鳥の会議』から読み始めたので最近だけど、山下澄人はやっぱりおもしろいな。読み続けよう。
- 作者: 山下澄人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/10/31
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- 作者: ウォルター・テヴィス,古沢嘉通
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