不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

さよならウルフ

 あの貴花田との一番の時、俺は11歳だった。別段相撲好きではなかったはず。だけどその日、両親も姉も家におらず、隣に住んでいた祖母とテレビの前で、そのころ横綱は最後に出てくる事を知らず、4時くらいから今か今かとずっと待っていたのをよく覚えている。そんな事も知らないのに、何故俺がこの一番を見ようと思ったのかは覚えていない。祖母か母から何か話を聞いたのかもしれない。とにかく、その大一番を俺はリアルタイムで見て、その力士が敗れ、後日「体力の限界」と言って引退したのも見届けた。彼がどれほどの存在で、引退がどういう意味なのかは後で知ったわけだが、それでもその時、大きな存在が土俵から去る事だけはわかっていた。
 千代の富士って、いい四股名だよな。漢字といい、語感といい。そしてその名にふさわしい人だったなと思う。俺にとって「大横綱」とは千代の富士の事だったし、全盛期だったら格闘技の頂点に立てた人だといまでも思っているよ。