又吉直樹『火花』(文藝春秋)。ようやく読んだ。いわゆる「文学青年」が書いた小説、と聞いてイメージするものから逸脱をしないのでおもしろさは薄いけど、書いているネタが著者独自のものだから退屈にはさせず、処女作としては上出来な部類かと。最後の漫才はベタだけど、ちょっとグッと来たし。もう知っているからなのかもしれないが、著者の文学や書く事、そして漫才への誠実な気持ちが伝わってきた。
読んでいて、Hさんの事を思い出した。Hさんはライター(でいいのかな)で、一年に一回会うかどうかのお付き合いだが書いているものは結構チェックしている。中でもwebで公開している日記は愛読していて、たぶん一番の愛読者だとすら思っている。別段、『火花』の文体が似ているとか、出てくる登場人物の誰かに近いとかではない。ただ、ふとHさんが頭に浮かんだのだ。
その事をHさん本人にメールで伝えるとすぐに返信をくれた。Hさんは又吉氏に取材した事もあり、《温度が近い気はします》と言う。なるほど、的確な言葉だ。おそらく温度が近いから、俺も思い浮かべたのだろう。そしてHさんの文章が好きなように、又吉氏の文章も、俺は好きだ。芥川賞を取ってしまった事はめでたいだろうが、それ故に売れすぎたし、騒がれすぎているので次作が書きにくい事だろう。だけどそういった周辺のノイズを気にせず、ガシガシ書いて行ってほしい。俺は読むよ。
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