不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

最近読んだ本から

 青木淳悟『匿名芸術家』(講談社。『四十日と四十夜のメルヘン』が併録されている理由ががよくわかる、エピソード0のような小説。とはいえ、謎と企みが込められているので一筋縄ではないけれど。出てくる土地がよく知っている場所が多かったので、妙な臨場感があった。読み終えた後でブックカバーを外し、ついでに表紙も外してみたら、「おお、これは!」と思うようなものだった。まさに表裏一体。

匿名芸術家

匿名芸術家

 柳美里『貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記』(双葉社。昨今、作家が筆一本で喰っていくのは難しいとは聞いていたが、芥川賞受賞だけでなく、その後も第一線で活躍している柳美里ですらこうなるなのだな。かつては書かないと社会で暮らせないような人間が作家になっていたと言われていて、著者もまたそういった「書かなければ生きられない」人なのだろうなと思う。それゆえの貧乏なのだ。だからここにある文章からは切迫感はあっても、悲壮感はない。お金がない事がお金に困る事ではない、という言葉は強がりではないのだろう。それにしても『創』ってひどいな……。
貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記

貧乏の神様 芥川賞作家困窮生活記