不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

《きょうは、カレーだ。》

 『アンソロジー カレーライス!!』(パルコ)。どういう趣旨からこの企画が生まれたのかは知らないが(しかも版元はあのPARCOである)、古今東西の著名人のカレーについて書かれたエッセイをまとめた、まさに俺のために編まれたと断言してもよいようなアンソロジー
 せっかくなのでざっと著者をあげれば――阿川佐和子阿川弘之安西水丸池波正太郎伊集院静泉麻人伊丹十三五木寛之井上ひさし井上靖色川武大内田百けん内館牧子小津安二郎尾辻克彦神吉拓郎北杜夫久住昌之獅子文六東海林さだお滝田ゆう寺山修司中島らも林真理子藤原新也古山高麗雄町田康向田邦子村松友視山口瞳吉本隆明よしもとばなな吉行淳之介(50音順)――さらに写真撮影が(あるんだよ、カレーの写真が、しかもカラーで)佐内正史である。紙の色はカレー色だし、フォントも何やら凝ったものになっているし、初出もちゃんと記載されているし、出オチ的な一発ネタのわりには手間暇かかっている。こういうのは、本気でやるからこそいい本になるわけだから、一読者として嬉しい。
 正直言えば全員が全員、いいエッセイというわけではないけど、やはり名随筆家やエッセイスト、芸達者が揃っているので読みごたえは十分。いくつかピックアップするなら、小津安二郎の文章は初めて読んだが短いながらも意外な硬さがあってよい。久住昌之のらしい一篇も結構笑える。寺山修司のガチな感じ、町田康の町田節などなどもナイス。池波正太郎山口瞳の書きっぷりは言わずもがな。
 しかし、あえて一篇だけあげるのならば、内館牧子の「カレーライス」だろう。絶品の味わい。カレーライス、そしてプロレスを扱っているから俺の琴線に触れまくっているというのもあるかもしれないが、それを抜きにしても、数多くあるエッセイの傑作だと思う。まさかカレーライスのエッセイで、こんな豊かな気持ちにさせられるとは思わなかった。必読。