不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

雑司ヶ谷を血に染めて

 樋口毅宏『さらば雑司ヶ谷』(新潮文庫。《オーケー、どこからこのイカれた物語を話そうか》という冒頭の一文が肌に合わなかったし、みんな絶賛しているので何となく敬遠していたが、文庫にもなったし、気にはなるので手に取った。
 物語は荒唐無稽どころかデタラメそのもので、話の規模のでかさや強引な展開にはいささか鼻白んだけれど、終盤のハイスピードかつカオスな展開はそれなりに楽しめた。作者あとがきに臆面もなく影響された作品、人物をずらり並べている無邪気な姿勢がカオティックな物語を作り上げたのだろう。
 それらが時にもろ表面に、時に裏側から滲み出すようにばらまかれていて、そのほとんどが俺も好きなものだから、にんまりしたりうんざりしたりと、いろいろ忙しい。タランティーノが引き合いに出されるのがよくわかる無意味なおしゃべりは結構おもしろかった。が、もっとおしゃべりに嘘を交えて、無意味に無駄に展開するくだらないものの方が、よりグルーヴが生まれたと思う。
 処女作としてはよい出来と言っていい。続篇なり、他の作品なりを読むかは少し悩んでしまうが、もう少し追ってみたい気もする。

さらば雑司ヶ谷 (新潮文庫)

さらば雑司ヶ谷 (新潮文庫)