不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

弟子からの恋文

 出版記念落語会まで行っておいて*1未読だった立川志らく『雨ン中の、らくだ』(新潮文庫を読んだ。志らくの芝居を見た帰りに、文庫になっていたのを見つけたので手に取ってみた。
 自らの半生と、師匠・立川談志への思い、そして落語論が書かれているが、その語り口は落語そのもの。立川談春『赤めだか』*2は自分を主人公にし、青春期を語りながら、自らが見た師匠の姿を描いているのに対し、本書はどちらかというと「談志と私」の関係に軸が置かれており、カバー裏にある《師匠談志と落語への熱き恋文》という一文は納得である。
 なかなかの名調子で読ませてくるが、この自意識の出し方には好みが別れそう。業の深さや己が狂気を文章芸にするとなると、こういう感じになるのであろう。落語でなら問題ないが文章となると、俺はいささか鼻についた。
 文庫化に際し、単行本の装丁でなくなったのは残念。談志の題字は中扉に使われているものの、山本容子の版画はなくなってしまった。小さくなるとはいえ、あれを使わないのはちょっともったいないんじゃないですかね、新潮社さん。
 ところで本書と『赤めだか』と併せて読んでみると、談志についての本は山とあるのだから、もう一人の最重要人物、高田文夫センセーについて誰か本格的な論なり評伝なりを書くべきではなかろうかと思う。何なら自伝でもいい。まぁ、その前にご回復する事をお祈りするしかないのだが。


雨ン中の、らくだ (新潮文庫)

雨ン中の、らくだ (新潮文庫)