『ウォッチメン』*1の映画も原作もかなり気に入っている者としては、ザック・スナイダーが「(笑)」つきで語られるのは、ちと哀しいのだが(他の作品見てないけどね)、この映画を見て、それもむべなるかなと思ってしまった。
『エンジェル・ウォーズ』を見た。監督・制作・原案・脚本、ザック・スナイダー。出演、エミリー・ブラウニング、アビー・コーニッシュ、ジェナ・マローン、スコット・グレン。原題は『Sucker Punch(不意打ち)』で、邦題がひどいと一時騒がれたが、俺はこっちの方がしっくりくる気がする。
予告で見て「こんな感じかな」と想像したもの以上の一作で、これまで使われてきた現実と妄想の二層構造どころか、まさかの妄想の妄想という三重構造を描き上げ、そこに自らの趣味を好き放題ぶちこんでシェイクしまくった濃厚ミックスジュースのような一作を作り上げた強引な手腕は、見事と言っていい。とはいえ、映画(作品)としてはイマイチと言わざるを得ないのが大変に残念なのだが。
「ダンス」をバーチャルな戦闘へと転換する事でこちらのイマジネーションを刺激させ、現実においての少女の「ダンス」は何なのかと考えれば、これら妄想の華々しさや雄々しさが、現実においての痛々しさである事に繋がり、彼女らの戦いへの覚悟と勇気は並々ならぬものだとよくわかる。
そうやって深読みはいくらでもできて、その考察は結構楽しいのだが、しかし映画自体にノレなかった者としては、その前で止まってしまうのだった。
目の前に繰り広げられるザック・スナイダー臭むんむんのバーチャルな戦闘シーンは、一回だけならそれなりにノレるものの、これがあと何回あるんだよと思うと、ゲンナリし、3回目辺りから確認作業のようになってしまった。
一番ガックリだったのは、主人公を演じたエミリー・ブラウニングが全然かわいくないわ、無表情だわ、アクションも微妙だわで、見ていてちょいとキツかったところだ。画像検索すれば、メイクの下は愛嬌あるかわいい女の子なのに。無表情は狙ったのかもしれないけど、かわいくないのは致命的だよッ!
妄想世界が現実にフィードバックされるとはいえ、現実で一発くらいパンチを見せてほしかったね。頭の中は自由だけど、やっぱり俺たちが生きているのは現実なんだから。