「立川志らく『雨ン中の、らくだ』出版記念落語会」へ行く。立川談春『赤めだか』に対抗して書かれた(わけではない)著書の出版記念会。ハコは紀伊國屋ホール。落語家だから落語も一席やる。それだけでなく、なんと立川談志も来るのだ! そんなわけで、客席はちょっと違う雰囲気だった。
まず志らくと、もう一人の師匠、高田文夫とフリートーク。高田文夫は本当に話を転がすのがうまい。内容は『赤めだか』の悪口(?)と談志のエピソード。「『赤めだか』は嘘ばっかです」という志らくの話も、どこからどこまで本当なんだか。最近、芸人ほどこわい人種はいないと気付いた。
次は志らくの落語。噺は「たちきり」。切なく哀しい噺なのだが、そこをユーモアスに聴かせる。大詰めを迎えた時、舞台袖がガヤガヤしている。む、これは! 談志が会場入り! 客席がにわかにざわつく中、志らく「大事なお客さんが来たみたいだ」。いいな、そういう入れ方! 現実と虚構が入り混じって、生の高座ならではの楽しみが噴き出てくる。
席を改め、志らくと談志登場。生の談志。声もかなり出ていて、少し安心した。「オマエがいちばんうまいよ」と言ったかと思うと、「うまいとおもしろいってのがあってな」と落語芸について話が展開する。その話が、メチャクチャおもしろい。刺激的で深い。次に何を言うのか予想ができず、客席は一言も聞きもらすまいと固唾をのんで言葉を待つ。そして話についていこうとする。フリートークなのに、凄まじい緊張感。具体例でちょっとだけやる落語の一瞬の一幕すら、世界が広がる。そんな緊張感を、途中から参加した高田文夫が合いの手を入れて和らげる。これまたうまい。
談志「俺はもう立川談志に飽きた」。たとえば「芝浜」で、最後に「おまえさん、お酒を飲もう」と絞るように言うところで、「オマエさん! もう談志の落語に飽きちゃった、飲もうよ!」となっちゃう、というのだ。立川談志が話す事に、立川談志の落語が飽きた、という事か? ううむ、俺はまだついていけん! ポストモダン、脱構築みたいだ。
その他の話も凄かった。もうシビれっぱなし。こりゃハマるわ。初の生談志というのでバイアスがかかっているとは思うが、強烈な体験をした。この人の傍にいるのは、並大抵じゃ駄目だ。独演会行きたいが、チケット取るのは相当難しいだろうなぁ。
三本締めで終わり。立川談志「寝床」を聴きながら帰る。
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