『エグザイル/絆』鑑賞。監督・製作、ジョニー・トー。出演、アンソニー・ウォン、フランシス・ンロイ・チョン、ラム・シュー、ニック・チョン、ジョシー・ホー、サイモン・ヤム、ラム・カートン、リッチー・レン。
マフィア要素とハードボイルド要素を記号化し、とことんまで突き詰める。それは様式美となり、一歩間違えれば失笑ものになるが、そのギリギリでとどまっている。シーン重視、特にかっこよさを最重要視し、物語を語るのではなく、ただただ名場面をつないでいく。それが破綻する事なくまとまっているのが凄い。
五人の男達が立っているだけで、クラッとするほどの色気と物語がにおってくる。
状況説明も、人物背景もない。あるのはたった一枚の写真だけだ。説明される事になれている人は、そのぶっきらぼうな語り口に面食らうかもしれない。何もわからないまま、状況や、展開や、行動、言動で少しずつ理解していく。そして理解した時に迎えるクライマックス。
繰り返されるドアのノック、コイントス、女とのすれ違い、銃撃、そして写真。ユーモアと緊張感が同居する空気は独特だ。
中でも銃撃戦の優雅さといったら。弾丸を連発するのに、一発の重みがしっかりあり、音が腹に響いてくる。スローモーションでひるがえるカーテン、蹴りあげる缶。思わず息をのんで見とれてしまうほど美しい。
男達の物語なので、女性の存在は軽い。軽いが、その軽さが実は女性のしたたかさであり、強さだったりする。男達は誇りや友情や金など、何かにこだわり、根元はとても弱い存在だ。だからこそ仲間がいるのかもしれない。何とか修羅場を出し抜いて、金をせしめ生き残っていく女に、男は思わず笑ってしまう。その強さ、弱さがはっきり描かれていて、よかった。
序盤の食事シーンで、彼らはうまそうにメシを喰らう。冗談を言い合いながら。それ以外でも、冗談を言い、じゃれ合い、時には喧嘩をしながら、死と隣り合わせの状況を歩いていく。一人ではなく、友達と。その光景が、たまらない。
ハードボイルド・ノワールにして、静謐で、品のある、美しい映画だった。必見。*1
*1:と書いたが、女性がどう見るかは正直わからない。従来のハードボイルド映画よりもおもしろく見られるとは思うのだが。