不発連合式バックドロップ

日記と余談です。

装丁は当然、平野甲賀

 津野海太郎『おかしな時代』読了。
 植草甚一を中心とした『ワンダーランド』周辺の方々やその著作は、興味があり知りたいし読みたいのだが、何故だか全然読めないし、合わない。高平哲郎なんか、はっきり「なんかやだ」と拒絶をしてしまう。*1小林信彦もそうかな。植草甚一の本は、何冊か読んでいるが、読み終えたものはない。理由は、よくわからない。
 そして、津野海太郎だ。初めて読むが、何故かこれは読み進めた。しかも楽しく。
 自らの編集人生と演劇人生を織り交ぜながら語る、日本のサブカルチャーが生まれた「おかしな時代」。黒テントなんか頭おかしいと思えるし、あの晶文社がこうやって生まれたのかと興味深く読んだ。とにかく「大変だし、苦労もあるけど、楽しいなぁ!」という空気が伝わってきて、うらやましく思えた。
 しかし、うらやましく思うのもおかしな話だ。今の「時代」が「おかしな時代」ではないのかと言えば「おかしな時代」だし、楽しむ事はいくらでもできるんだから。時々、今はゴールドラッシュの後で、もはや枯草も残っていないんじゃないかと思う時もあるんだが、そんな事はないよなぁ。
 そうか。津野海太郎は、花田清輝の「だから君たち『若い世代』は駄目なんだ」という言葉に反発し、《総じて私は「世代」というくくり方が好きではない》と一文書いているが、この意識があるから、彼の文章は読めて、おもしろいと思えたのかもしれないな。まぁ他の人たちの世代観は知らないから、違うかもしれないけど。
 写真もふんだんに使われているが、キャプションにもちゃんと気を配っていて、そういうのが読者としてはうれしい。

おかしな時代

おかしな時代

*1:別に嫌いってわけではない。いや、拒絶するなら嫌いなのかな。